オオトカゲから廃棄物まで!? 図書館で読めるニッチで面白い専門誌いろいろ

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 都内某所──ふらりと図書館に立ち寄って、新聞&雑誌コーナーを覗いてみると……「えっ、こんなにたくさん?」と驚く。ざっと新聞30誌、雑誌500誌以上。もちろん、図書館の規模や方針によって所蔵数の差はあるけれど、メジャーなものからマニアックなものまで、実に多くの雑誌が置かれている。

「こんなマイナーな雑誌を買うなんて税金のムダだ!」なんて言っちゃいけません。まったく興味のないジャンルの雑誌でも、読んでみたら案外面白いんです。今回は、図書館で見かけたマイナーな雑誌のマニアックな楽しみ方をご紹介。

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■トカゲとむしと
○季刊『ビバリウムガイド』(エムピージェー)

ビバリウム(Vivalium)とは、飼育する生き物がもともと生活していた生息地の環境を、人工的に再現して育てることで、この雑誌が扱うのは「爬虫類・両生類」。
最新号をめくってみるといきなり「モンテネグロの自然と動物」の見出しで、崖に住むリクガメの記事。日本人の記者が東欧の大自然の中、リクガメの生息分布を調べている。そんなピンポイントな記事が前後編で掲載されていることにも驚くが、それはまだ序の口。
目玉の特集は──「君はボルネオミミナシオオトカゲを見たか」。
静岡県賀茂郡にある体験型動物園『iZoo【イズー】』に展示されているボルネオミミナシオオトカゲ。記事によれば、世界で唯一、生きた姿を拝めるのがiZooで、記者さんはその幻のトカゲを「触り」「撮影」したのだが、レポートから伝わる感動と興奮の度合いが半端ない。果たして読者も「そうそう」と頷いているのかどうかはわからないけれど、「トカゲに触って涙する世界」があることを、こんなにも情熱的に文章にできるんだと感動さえ覚える。

○『月刊むし』(むし社)
爬虫類の次は「むし」。その名の通り、各種様々な「虫」を扱った雑誌で、最新号は「セミ特集」。
虫なんて気持ち悪いんじゃないのか、と一瞬警戒心が顔をもたげるものの、開いてみると驚き。
セミの種類や標本写真が掲載されている中、フォトエッセイ『翡翠色のセミ』に目を惹かれる。ミカドミンミンというグリーンのセミのグラビアは、ため息が出るほど美しく、宝石のようですらあるのだ。
さらにページをすすめると──「今月の本」のコーナーで紹介されているのは『ダニ・マニア チーズをつくるダニから巨大ダニまで』(島野智之)。『KIROKU・HOKOKU』では、日本全国のむしマニアさんたちから、珍種や希少種などの目撃情報が載せられている。「ウスイロオナガシジミの斑紋変異個体を榛名山で目撃。通常より橙の部分が多い」というSさんは、プロ並の美しい写真を付けて解説するこだわりっぷり。むしマニア恐るべし、なのだ。

■現代と近代、農業と盆栽
○月刊『現代農業』(農文協)

農家さんだけじゃなく、ご家庭で野菜を育てたい人にもおすすめなのが『現代農業』。
「良食味・多収」をキーワードに、農作物の上手な育て方を様々な角度から紹介しているこの雑誌の最新号の特集は「頑丈肥料ケイ酸VSカルシウム」。「ケイ酸は作物を覆うヨロイ、カルシウムは作物の細胞骨を強化」とか「モミガラで土が変わった。卵のカラは偉大な肥料」「発酵カルシウム、ケイカルしみ出し液」などなど、各地の農家の皆さんが実際に行っている方法を対決記事にして、読者を飽きさせない。

○月刊『近代盆栽』(近代出版)
何がどう近代なのかはわからないが、盆栽愛好家のための情報満載な1冊が『近代盆栽』。
育て方から枝葉の刈り込み方まで、丁寧な記事が並ぶ。
目を引いたのは「0からの樹作りにチャレンジ」のコーナー。
今回のテーマは「実生からクリの斜幹樹を目指す」で、年代別設計図と作業の方法が解説されている。1年目「針穴かけ」、2年目「植え替え(3月)」、3~4年目「剪定(2~3月)」、5~6年目「剪定、浅鉢植え替え(3月)」、7~10年目「開花、結実」と、ある。
ほうほう、なるほど、こうしてクリの盆栽を作るのか……とひとしきり感心してから、ハタと気づく。「えっ……10年?」と。東京オリンピックよりも先の未来を見据えて樹作りをするなんて、なんと遠大な計画! 人生設計とともに盆栽はいかが?

■そして、廃棄物
○『月刊廃棄物』(日報ビジネス)

冗談ではない。毎月刊行されている『月刊廃棄物』は、廃棄物を鑑賞するための本ではなく、大真面目に深刻な廃棄物問題に取り組み、ごみ処理やリサイクルなどの実際的な解決方法を具体的に紹介する雑誌なのだ。
最新号の「古紙リサイクル最前線」特集では、古紙・衣類の分別回収や、新しい集団資源回収システム、事業系古紙のマッチングサイトなどといったリポートや、「古紙持ち去り撲滅へ向け各地でGPS追跡調査スタート」という最新の問題を取り上げるなど、多角的にごみ処理問題を分析している。
シリーズ企画では、ちょっと旅気分な「リサイクルプラザ探訪」や、ゆるキャラ的息抜きのできる「ECOキャラ発掘隊」などもあるし、広告には、高性能の焼却機やゴミ処理機なども掲載されており、廃棄物業界のトレンドや動向も読み取れ、廃棄物に関わりのないあなたにも楽しめるバランスのとれた一冊となっている。

 この他にも、珍しい雑誌は世の中に数多く存在する。本屋さんでは中々見かけない雑誌でも、図書館に行くと置いてあったりするし、たいていの雑誌は最新号以外は貸出もできるし、図書館同士の連携で別の自治体から借りたりもできる。新たな世界を開拓すべく、あなたも図書館に足を運んではいかが?

 最後に図書館プチ情報。
 もし借りた本を破ってしまったり、ページが外れてしまったときは、セロテープやボンドで補修しないで! 図書館では専用のノリや道具で本を修理を行っているので、一度それを全部取り除かなくてはならず、かえって手間になってしまうのだ。素直に「外れました」「破れました」と伝えよう! 「次回からお気をつけください」と思いがけない笑顔がかえってくるはず。

文=水陶マコト