即否定、頑固…、職場のやっかい上司対処法

ビジネス

更新日:2013/9/26

 たとえばせっかくいいアイディアを提案したのに、「そんなの無理、無理。お前は経験不足でわかってないんだよ」と頭ごなしに上司に否定されたり、反対に上司が時代遅れのビジネス常識を頑なにゆずらないために、こっちまでとばっちりを受けたり…飲み屋で聞こえてくる若手サラリーマンのぼやきは、ちょっと困り者の上司をめぐる鬱憤が多い。世代格差なのか、単に性格があわないのか。飲み屋で愚痴って気分が晴れるならまだいいが、そんな上司のせいで落ち込んだり、ストレスでバランスを崩したりしたら大変だ。

 実は「職場の人間関係」がビジネスマンを悩ませていることはけっこうある。今年の8月に転職サイト『[en]社会人の転職情報』が行ったアンケート調査によると、社会人の退職理由は表向き「家庭の事情」だが、本音は断トツで「職場の人間関係」というケースが多い。企業というものが集団の場である以上、人間関係は土台であり、絶対に無視できないもの。逃れられないならば、関係を良好に保つ努力をしたほうがいいに決まっている。

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 とはいえ、どうしたらいいものか? そんな悩みには、『図解「やっかいな相手」がいなくなる上手なモノの言い方』(谷原 誠/角川書店)をおすすめしたい。テレビにも出演している敏腕弁護士が書いたこの本には、タイトル通りさまざまな「やっかいな人」への対処法が「図解」されている。ビジネス、ご近所、親戚、友人など前提となる関係性の質もふまえながら、自慢ばかりする人、挨拶しても無視する人、話が長い人、傷つきやすい人、すぐクレームをつける人…などなど、かなり具体的な「やっかいな人」のタイプを分類・分析し、具体的な対処法を示してくれるのだ。

■「すぐ否定してくる上司」には「なるほど」
 たとえば冒頭の「すぐに否定してくる上司」の場合、傾向として本人の「自尊心」を満たすために上下関係をはっきりさせ自分の優位を証明したいとの心理から、否定的な態度につながっている人が多いと分析する。対応としては、同意を示して相手の警戒心をゆるめるのが肝要で、「なるほど」と同意した後で、こちらの意見を伝えるとよい。なお、自分の意見を伝える時に、「でも、しかし、ただ」など逆説の接続詞はNG、「ところで、私の意見も聞いてもらえますか?」と、あくまでも相手を尊重したまま主張を伝えるのがコツになる。

■「頑固な上司」の場合、自身の柔軟性が欠けているかも
 また、「頑固な上司」の場合は、あなた自身に柔軟性が欠けているのが頑固と感じる原因になっている場合もある。まず周囲に上司への印象を聞き、周りが頑固ではないというならば、原因は自分にあると認めて相手の意見に耳を傾ける努力を。周囲も頑固だと同意するならば、「もっともです」と配慮する姿勢で上司の自尊心を尊重しつつ、「ところで、今回はこういう事情もできたみたいなのですよ…」と、相手が意見を変えやすい会話を心がけていくようにする。

 なお「議論の目的はよりよい結論に到達すること。相手を打ち負かす必要はない」と著者が言うとおり、たしかにいたずらに相手をやりこめて溜飲を下げても職場の雰囲気は悪くなる一方だ。建設的に「良好な関係」を築くために、まず相手の行動に潜む心理を分析した上で、まず自分からできる対処法を実践すべし。

 当たり前だが、相手を変えるのより、自分が変わることのほうがずっと簡単なのだ。対処法には、声のかけ方や返事の仕方など言い方ひとつのことも多いが、相手の心理を客観的に理解した上だからこそ、こちらの意識的な「控える」態度が有効に機能する面もあるのだろう。

 いよいよ来週から下半期。残り半期を上司といい関係で過ごすためには、まずは今こそ我が身を振り返ろう。いつまでも飲み屋で愚痴を続けてないで、まさに「変わるなら、今でしょ!」なのだ。

文=荒井理恵