“ゆば”“トコブシ”“またぎ汁”…、B級グルメ、ゆるキャラの次は、ご当地缶詰が熱い!

食・料理

更新日:2013/9/30

 ダイエットに効果的とサバ缶ブームが起きたり、家飲みのおつまみやランチのちょい足しとしても人気になっている缶詰。缶詰バーもブレイクするなど、保存食としてだけでなくグルメとしても注目を集めているのだ。そして、そんな缶詰を愛してやまない缶詰博士こと黒川勇人が、9月20日に『日本全国「ローカル缶詰」驚きの逸品36』(講談社)という本を出した。この本では、いろんなご当地缶詰が紹介されているのだが、全国にはいったいどんな珍しい缶詰があるのだろう?

 まずは、栃木の日光ゆば製造が作った「味付巻ゆば」。ゆばの缶詰なんて聞いたことがないので想像できないかもしれないが、缶を開けるときちっと巻きしめられたゆばがひとつ。これは、生のゆばを巻きしめてから1度油で揚げて作られているそう。そして、京都のゆばは引き上げるときに端に串を通して1枚になるようにするのだが、日光のゆばは中央に串を通して2つ折り状態で引き上げる。2枚重ねで厚みがある分噛みごたえが増すので、これだけでも十分おいしいおかずになる。3缶1050円で料亭で味わうようなゆばが食べられるなら、安いものだ。

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 また、缶詰界ではおなじみのツナ缶も侮れない。最近のツナ缶は綿実油やオリーブ油、大豆油、ひまわり油など、調味液にもこだわっているし、スイートコーンやポテトを加えてそれだけで食べられるようにしたものも。そんななかでも格別なのが、静岡の由比缶詰所で作られている「炙りビントロオリーブ油漬」。これは、缶詰なのに直火で炙った部分には焦げ目がついている。作り方も「脂の乗ったトロ部分を香ばしく炙り、それを壊さないよう1枚ずつ手で剥がして丁寧に缶に詰める」というこだわりようだが、それからさらに半年以上倉庫で熟成させるのだ。製造過程にもこだわって作られているから、毎年数量限定なのもうなずける。

 そして、貝の缶詰はいろいろあるが、徳島には殻ごと缶詰にしてしまった「貝付流子」というものもある。流子とはアワビを小さくしたようなトコブシと呼ばれる貝のことなのだが、その味はアワビにも負けず劣らずだそう。しかし、トコブシは資源として保護されているので素人ではなかなかありつけない貝なのだ。そんなトコブシを、なんと殻つきのまま丸ごと贅沢に缶詰にしたのがこの「貝付流子」。そもそもトコブシはサイズが小さいので、産地の家庭でも殻ごと煮て身をはずしながら食べるのが一般的なのだそう。缶詰なのに、貝から外して食べるという楽しみも得られるし、産地の食文化まで一緒に体験できるなんてすごい。これを食べるだけで、どこにいても徳島に行った気分になれるのだ。

 他にも、大阪の缶詰バーが監修した「たこやき」の缶詰や京都のだし巻きの缶詰。愛知にはわらびもちの缶詰なんてものもあるし、郷土料理であるまたぎ汁やいちご煮、がめ煮が味わえるものも。今までは、現地に行かなければ食べられなかったご当地料理も、自宅にいながら味わう時代が来るかもしれない。

文=小里樹