6人目の部員は引きこもりですが、何か? 『中二病でも恋がしたい!』ほか ―ブンガク!【第12回】―

更新日:2013/10/24

 中高生を中心に大人気の「ライトノベル」(通称ラノベ)。最近ではテレビアニメ化などの影響でファン層も拡大しています。そこで、ラノベって言葉は知ってても読んだことがない、という初心者向けに“超”入門コラムをお届け!代表的な作品の紹介や、楽しみ方について、作家や絵師など関係者への取材も織り交ぜながら、ラノベ風の会話劇でお送りします。毎月第1・3火曜に更新予定!

制作協力:代々木アニメーション学院 / 文=カンダ ユウヤ 絵=ましま


【前回までのおさらい】
○【第1回】ブンガク部が廃部ってどういうこと?
○【第2回】帰国子女でラノベ好きな美少女あらわる!
○【第3回】ブンガク部の救世主?顧問をさがせ
○【第4回】ラノベ好きな先生からの挑戦状
○【第5回】『東京レイヴンズ』作者・あざの耕平さんに聞いてみた
○【第6回】ラノベって女の子でも読めるの?
○【第7回】中二病でトラブルメーカーってなんなの?
○【第8回】教えて!大人でも楽しめるキャラクター小説
○【第9回】ラブコメはラノベの王道!?
○【第10回】スピンアウト・スピンオフってどういう意味?
○【第11回】なぜ人気?主人公が人外のライトノベル

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~帰り道 夕方~

佐藤唯(普)
「ねえ、中島先輩。6人目の候補が見つかったって本当ですか?」

中島優斗(普)
「あー、まあね。……ところで二人ともさ」

桜井智樹(普) 佐藤唯(普)
「はい?」

中島優斗(困)
「いつまでついて来るの?」

桜井智樹(笑)
「それは先輩が放課後“6人目はあいつしかいないかぁ”とか呟いてして帰りの支度をしていたから多分、その部員候補に会いに行くんだと思って面白そうなんでついてきました。この僕の『イービルアイの邪眼』(※1)からは逃げられませんよ!」

中二病でも恋がしたい!

「イービルアイの邪眼」(※1)
『中二病でも恋がしたい!』(虎虎/京都アニメーション)

主人公・富樫勇太は中学校のとき俗に言う中二病だった。そんな黒歴史に忘れ別れを告げるべく、順風満帆な高校ライフを満喫していたが、ある日、現在進行形の中二病感染者・小鳥遊六花と出会い妙な事件に出くわすことに。以来、勇太は六花の中二病に巻き込まれていく・・・。イービルアイの邪眼とは魔力を宿し金色に輝く右目のことで、六花の設定では眼帯をつけてその魔力を封印しているが、その下には金色の瞳を演出するカラーコンタクトを着けている。

中島優斗(困)
「なぜにカラーコンタクトをしているの? まあ、いいや。だけど、その……僕はこのまま帰宅するつもりなんだけど」

桜井智樹(困) 佐藤唯(困)
「会いに行かないんですか!?」

中島優斗(困)
「あ、いいや、会うには会うけど……その、あの、それ僕の弟のことだしさ」

桜井智樹(普) 佐藤唯(普)
「え……弟!?」

桜井智樹(困)
「え、マジで! 初耳ですよ、そんなこと!」

佐藤唯(困)
「ウソ! 先輩にブラザーがいたなんて!」

中島優斗(笑)
「いるんだよね、実はさ。うちの学校の一年生だ。まあ、ここ二ヶ月間、引きこもりだけど……弟が学校に行くきっかけにでもなればいいなって思ってさ」

桜井智樹(普) 佐藤唯(普)
「……それはどこの『ささみさん』(※2)ですか?」

ささみさん@がんばらない

「ささみさん」(※2)
『ささみさん@がんばらない』(日日日/小学館)

引きこもりの「ささみさん」と奴隷体質の「お兄ちゃん」。二人のささやかな生活に襲いかかるのは、八百万の神々によるデタラメな怪奇現象と「邪神三姉妹」とのあり得ないラブコメ!? 世界の神話まで巻き込んでも「がんばらない」日常系神話ファンタジー。ガガガ文庫(小学館)の人気シリーズで、2013年にアニメ化された。

中島優斗(困)
「は、い?」

~中島家(自宅)~

中島優斗(笑)
「さ、あがって、あがって!」

桜井智樹(笑) 佐藤唯(笑)
「お邪魔します!」

中島優斗(普)
「じゃあ、ここでちょっと待っててね。いま、お茶を入れるからさ」

佐藤唯(普)
「……それにしても先輩の家に来るなんて初めてですね」

桜井智樹(普)
「うん、僕も初めて来たよ、でも先輩に弟がいたなんてね」

佐藤唯(普)
「そうですね、部員候補がこんな近くにいたなんて灯台下暗しですね~」

桜井智樹(困)
「え、気にするところそこなの? ……じゃなくてさ、先輩の弟だよ、どんなやつなのとか、引きこもりって何!? とかまずはそういうところをツッコまない、普通!?」

佐藤唯(笑)
「私、引きこもりとかそういうのあまり気にしませんから大丈夫です!」

桜井智樹(困)
「え、そうなの!?」

中島直斗(普)
「……ああ、兄さん? 帰ってきたの。頼んでおいた『妖精さん』(※3)が出てくる本を買ってきてくれた~? ん?」

人類は衰退しました

「妖精さん」(※3)
『人類は衰退しました』(田中ロミオ/小学館)

人類がゆるやかな衰退を迎えて数世紀。地球は3頭身の手のひらサイズの「妖精さん」の世界になっていた。彼らは人類との間に“調停官”をおき、平和な日々を築いていた。調停官となった主人公の「わたし」は、さっそく妖精さんたちに挨拶に出向くが、三人の妖精さんを内緒で事務所に連れ帰ってしまい、以来、奇妙なドタバタに込まれていく・・・。妖精さんとは、地球に100億から200億人はいるとされる現人類。お菓子が大好きで高い知能を持っている。

桜井智樹(普) 佐藤唯(普)
「あっ」

中島直斗(困)
「……あれ、だ、だれ!?」

桜井智樹(普)
「あ、えーと……」

佐藤唯(笑)
「とりあえず、こんばん……」

中島直斗(困)
「……うわわあああああああああーっ!」

桜井智樹(困) 佐藤唯(困)
「ええッ~!」

中島優斗(困)
「おい、ど、どうした! なにがあった直斗!」

中島直斗(困)
「……だ、誰か、知らない人がいるよ~」

中島優斗(笑)
「ああ、そういうこと……あれは僕の後輩たちだよ。ある意味お前に会いに来たんだよ」

中島直斗(困)
「え?」

中島優斗(普)
「ま、直斗もここに座れよ」

中島直斗(困)
「あ、うん」

中島優斗(普)
「さて、じゃあ、気をとりなおして彼が僕の弟、中島直斗だよ」

中島直斗(普)
「あ、どうも……てか、どちら様ですか?」

佐藤唯(困)
「あ、私、先輩の後輩の佐藤唯です、よろしくお願いします!」

桜井智樹(困)
「同じく桜井智樹です、よろしく!」

中島優斗(普)
「じゃあ、さっそくなんだけど直斗、お前さライトノベルとか興味ないか?」

中島直斗(普)
「ああ、ラノベね。好きだけど?」

桜井智樹(普)
「なら君、ラノベの部活とか興味ない?」

中島直斗(普)
「えーと、部活なのそれ? どんな部活?」

桜井智樹(普)
「それはなんというか、好きな本を紹介したりとか……」

中島優斗(普)
「それとみんなで雑談したりとか、あとは……」

佐藤唯(普)
「あとは部員集めとか?」

桜井智樹(困)
「いや、唯ちゃん、それ今まさにやっていることだし!」

中島直斗(普)
「部員集め、なにそれ?」

中島優斗(笑)
「ああ、実は今、部員を募集していて最後にあともう一人と思ってお前を誘ったんだけど、入ってみるか?」

中島直斗(笑)
「そうなんだ。なんか面白そうだな、それ……」

佐藤唯(笑)
「なら、来てみるだけでも来てみませんか、きっと楽しいですよ」

桜井智樹(普)
「そうだよ、歓迎するよ!」

中島直斗(困)
「あ、でも、僕ここのところ学校に行ってないし……てか、行きたくないし」

中島優斗(笑)
「来てみるだけでいいって言っているだろ、学校へのリハビリな感じに、ちょっと遊びに来るくらいの気持ちでいいよ」

中島直斗(普)
「で、でも……」

佐藤唯(笑)
「幽霊部員でもいいので、どうか、ぜひ願いします!」

中島直斗(困)
「ええ~!」

桜井智樹(笑)
「とりあえず来てみなって楽しいよ!」

中島直斗(困)
「あ……ああ、えーと……」

中島優斗(普)
「き」

桜井智樹(普)
「き」

佐藤唯(普)
「き」

中島優斗(笑) 桜井智樹(笑) 佐藤唯(笑)
「きまったー!」

佐藤唯(笑)
「じゃあ、これからは同じ部のメンバーですね、よろしくお願いします!」

中島直斗(普)
「……え?」

桜井智樹(笑)
「よしッ! これで文化祭の準備に取り掛かれる、やる気出てキター!」

中島直斗(困)
「はあ? ちょっと、待ってよ!」

中島優斗(笑)
「よかったな、直斗。今度からは学校にいけそうで……」

中島直斗(困)
「ねえ、僕の話を聞いてよ! 誰も学校にまでとは……」

佐藤唯(笑)
「……あ、そういえば直斗君は一年生ですよね? それなら私と同級生ですね。ちなみに何組ですか?」

中島直斗(普)
「え? あ、うん、僕は一年2組だけど……」

佐藤唯(普)
「え!?」

桜井智樹(普)
「ああ、唯ちゃん、なんかあったの?」

佐藤唯(笑)
「……なんだ、私、直斗君と同じクラスじゃないですか!」

桜井智樹(普)
「マジで……!?」

……つづく

 

次回予告

佐藤唯(笑)
「こんにちは佐藤唯です!」

桜井智樹(笑)
「こんにちは桜井智樹です!」

佐藤唯(普)
「今回は驚きましたね、中島先輩に弟がいたなんて」

桜井智樹(普)
「そうだね、これは隠し子ならぬ隠し弟だよね!」

佐藤唯(笑)
「……ふふ、先輩、笑えません」

桜井智樹(普)
「あはは……すいません」

佐藤唯(普)
「ふう、では、そろそろこの辺で……」

佐藤唯(笑) 桜井智樹(笑)
「次回の『ブンガク!』もお楽しみに!」