『アニメあるある』は本当にあるある!?

マンガ

公開日:2013/10/2

「OPはみんなで走る! EDはひとりで走る!」
「生徒会が神のような権力を持っている」
「女の子は空から降ってくる」

 あるあるある~! アニメ好きなら思わず『クイズ100人に聞きました』の観客のようなリアクションを取ってしまう“あるあるネタ”。これだけを集めたのが『アニメあるある』(著・多根清史)だ。

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 この本は、アニメ作品のあるあるネタだけではなく、アニメファンあるある、アニメグッズあるある、アニメ都市伝説といった幅広いネタに加え、制作者側である三氏──アニメ監督・岸誠二、脚本家・上江洲誠、音響監督・飯田里樹──の座談会という形で検証しているコーナーもあって、なかなかに興味深い。

 筆者の友人にもアニメのシナリオライターがいるので、この本を見せたところ……「揚げ足取りも多いけど、笑えねー」とのリアクション。
 このあるあるネタは時として現場に苦難をもたらす場合も少なくないというのだ。そこで、あるあるネタの中でも、これは困った──というものを私的に素敵にピックアップ。ベスト3(ワースト3?)としてお届けしよう。

【3位】
「同じ声優が似たキャラを演じていて混乱する」(アニメあるある)
「同時期のアニメの声優キャストがどれも似たりよったり」(声優あるある)

 キャスティングは、人気度や声質によって決まるもので、どうしても似たキャラは似た役者さんが演じることが多いから仕方ないのだが、「とあるドラマCDで原作者にキャスティングの希望を出してもらったところ、運良く全員の調整がついて豪華な収録になったんだけど……みんな声が似てた! これ、絵がないんですけど……音だけなんですけど……てゆーか、ブースで聞いてて区別着かなかった(泣)」(某脚本家談)

【2位】
「棒読みアイドルのワキをベテラン声優が固める」(アニメあるある)

 劇団ではないが、キャストの座組をするに当たって、現場を引っ張るポジションとしてベテランの声優さんがセットされることがよくある。
 不慣れな新人さんをフォローするという目的もあるし、現場がピリッと引き締まるし、決してマイナスには思えないのだが……、「“キャラと違うんでセリフ変えてください”とか“どうしてこんなシナリオ書いたんですか?”的に、根本から直させられた人の話を聞いたことがありますよ、某RPGだったけどね、それは。あとね、ミスした声優さんに“笑わない!”と叱るベテランさんもいます。あ、でも悪のボス・飯塚昭三さんはベテランだけど超優しくて、差し入れまで自分で買って来てくださってたなぁ」(某脚本家談)

【1位】
「女子でも毎回同じ服を着たきりで着替えをしない」(ラブコメアニメあるある)

 それって一昔のアニメや特撮のあるあるネタっぽいんだけどなぁ。最近はけっこう衣装替えしない?
「バンクシーン(使い回し)が減ったってのもあると思うんだけど、衣装を変えたり、背景がポンポン変わるのがよくないんだよね」
なんで? てゆーかそれが1位?
「現場で叱られたんですよ。“おまえの書く回は新規設定の描き起こしが多すぎる”って」
どういうこと? 話数が違えば設定も新しいのが出てきたりするもんじゃないの?
「そうなんだけど、設定を起こす=お金がかかる、ってこと。デザインだけじゃなくて、色彩設計だの何だの、色々あるし。その後の話数でも使える設定ならいいけど、1話こっきりで二度と出てこないような設定を何個も作られちゃあ、予算がいくらあってもキリがない、っていう……ね」(某脚本家談)

【番外編】
「OP途中で前回のセリフを入れるアニメは名作」(名作あるある)

「『蒼き流星レイズナー』のことかッ! プラモが売れずに路線変更して『北斗の拳』みたくなったレイズナーのことかッ! いや、好きだけど」(某脚本家談)
まあまあ、落ち着いて。なるほど。『あるある』ネタの裏側には、そんな事情もあったのか。でも、彼は言う。
「見る側には制作者の事情なんて関係ない。出来上がったものがすべてで、それを楽しんでもらえればそれでOKなんだから」
揚げ足取りもよし、ネタにしていじるもよし、キミだけの『あるあるネタ』を見つけてはいかが?

文=水陶マコト