三谷幸喜新作はコメディ封印!? 歴史が動いた無血の戦の面白さとは

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公開日:2013/10/7

 ヒット作を連発してきた三谷幸喜監督の最新映画『清須会議』が、11月9日に公開される。織田信長亡きあと、織田家の後継ぎを戦でなく会議で決めたとされる「清須会議」を題材に、柴田勝家(役所広司)、羽柴秀吉(大泉洋)ら武将たち、信長の妹・お市(鈴木京香)、秀吉の妻・寧(中谷美紀)ら女たちの頭脳戦をユーモラスに描く。

 原作は自身の書き下ろし小説。だが小説と映画は、アプローチの方法がまったく違う。小説では、会議にかかわる19人をそれぞれモノローグで語らせる手法をとった。一方の映画では、心の声をナレーションに置き換えるような安易なことはしない。武将たちの駆け引きや騙し合いが、会議を取り巻くすべての人の思惑と絡み、一つの群像劇となっている。

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 ただ、三谷映画から連想する「爆笑コメディ」を期待すると肩透かしを食うかもしれない。「今回はコメディではない」とは、取材した三谷氏の言葉。セリフもストーリーも、お客さんをとにかく笑わせようと作るのがコメディと考えると、『清須会議』は「笑わせようと思って作っていない」からだそうだ。そうはいっても、史実に基づくストーリーの中で、歴史上の人物に扮した超豪華俳優たちが、知恵と経験をかけて真剣勝負する姿はふつふつとした笑いを誘う。本人が真面目にやるほど第三者にとっては可笑しい、そんな“人間喜劇”の本質が込められているように思う。

文=平山ゆりの/日経エンタテインメント!
(ダ・ヴィンチ11月号「出版ニュースクリップ」より)