『黒子のバスケ』、あのパスの球速は時速290km! 柳田理科雄氏が徹底検証

科学

更新日:2013/10/9

 アニメ第2期スタートも決定し、いまや『週刊少年ジャンプ』の看板作品の一つとなったマンガ『黒子のバスケ』。『ダ・ヴィンチ』11月号では、男女とわず熱狂的な支持をあつめる同作を特集。同作の人気のひとつである“超人的な技”を、空想科学研究所・柳田理科雄氏が徹底検証!

「科学や数式を用いてアニメやマンガを検証してみることで、読者が抱いている印象よりも、はるかにすごい数値が出てくる面白さがあるんです。常に計算するのが私のマンガの読み方。だからといって感動的なシーンに興味がないわけではなくて、むしろ計算することでもっと感動したり驚いたりしているわけです」と語る柳田さんの見せてくれた証明とは!?

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 柳田さんは高校に無償で送られる『空想科学 図書館通信』やツイッターで質問を募っているのだが、中でも『黒子のバスケ』の質問は多いそうだ。これも人気の証しといえるだろう。『黒子のバスケ』の技では、緑間の超長距離3Pに注目した。

「絵を見ると、シュートがほぼ垂直で入ってますよね」

 シュートの角度を測ってみると、なんと80度。リングまで6.75mある3Pラインから投げて80度の角度で入るシュートの滞空時間を計算すると2.8秒となった。NBA選手たちの3Pの滞空時間が1.5秒だから、2倍近くもボールが宙を舞っていることになる。

「12.4m離れたセンターラインからだと滞空時間は3.8秒、もっともゴールから遠い相手コートの隅27.4mからだと5.7秒になる。距離が遠いほどボールを高く上げる必要があります。ボールの高さを計算すると、センターラインからだと23m、相手コートの隅からだと45mとなる。東京ドームの天井が約56mなので、緑間は東京ドームでなら試合ができるでしょう」

 黒子の技「加速する(イグナイト)パス・廻(カイ)」では、受け止めた青峰の足に着目。ボールの反動によって足が3㎝ほどズズッと移動したのだ。

「なぜ青峰がボールを止めることができたかというと、シューズの摩擦が働くからです。シューズと床の摩擦係数が、車のタイヤと路面と同じ0.5とし、これに地球の重力の強さを表す9.8を掛け、さらに足が滑った3cm掛けるなどして計算していくと、ボールの速度が時速290㎞だったことがわかります」

 記事では他にも、10年に1人の天才が同時代に5人いるという「キセキの世代」が起こる確率や、流星のダンク(メテオジャム)でみせた火神の跳躍力の検証をおこなっている。

取材・文=大寺明
(『ダ・ヴィンチ』11月号「黒子のバスケ」特集より)