ビッグデータ時代の期待の星!? いま注目の「データサイエンティスト」ってどんな仕事?

ビジネス

公開日:2013/10/10

 いま、個人の検索履歴や商品購入履歴などの膨大な情報をマーケティングに利用するビッグデータ・ビジネスが活況を呈している。

 バラバラに見ればただの情報に過ぎないが、それぞれの要素を分析し、関連付けて規則性を見出せば、未来に起こることを予測し、対策を練ることができる。というわけで、ビッグデータ時代の到来とともに脚光を浴びているのが、“データを科学する職人”「データサイエンティスト」だ。

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 今年9月には慶応義塾大学SFC研究所などがデータサイエンティスト育成カリキュラムの構築、ならびに先進的なビッグデータの集計・解析手法などを研究する「データビジネス創造・ラボ」を設立し、転職情報誌でも「注目の職種」として特集が組まれるなど、一つのトレンドとなりつつある。いったいどんな職業なのだろうか? 

 その手がかりのひとつとなるのが、新米データサイエンティストの活躍を描いた統計入門書『とある弁当屋の統計技師』(共立出版)。著者は、徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部教授の石田基広氏。本書では、データサイエンティストとの仕事をこう紹介している。

「(データサイエンティストは)インターネット関連企業で顧客データあるいは売上データの統計をとったり、病院のマネジメントを行ったり、はたまた百貨店でテナントごとの販売状況をチェックしてセールスの方針を助言したりと、さまざまな分野で活躍しています」

 1日中パソコンの前に座り、データと格闘しているのかと思いきや、時には小売店のような顧客のもとに足を運び、仕事の流れをチェックしたり、お店の問題点を洗い出し、売上改善につながるアドバイスも行うのだとか。

 本書に書かれている「突然売上が落ちたんだよね」と悩む弁当屋の店主と、相談されたデータサイエンティストの具体的なやりとりをご紹介しよう。

デ「(パソコンを操作する音)いま、ざっとお店の売上状況を確認しているんですが。……ああ、店長」

店「え、もう、なにか分かったの?」

デ「多分、いや間違いなく、再来週には回復すると思いますよ」

店「なんで?」

デ「先週から20代、30代の男性客の一部が店でお弁当を買っていません」

店「え?」

デ「ここ数日来店されていないお得意さんの一部は、ポイントカードの会員様なのですが、登録時のアンケートで特定の項目にチェックを付けています」

店「どんなお客さん?」

デ「総合的に判断すると、いわゆるアニオタといわれる男性層ですね。店長、お店の100m先にあるコンビニでいまキャンペーンをやっているんですよ」

 そして、このキャンペーンもあと10日で終わる…といいつつ、データサイエンティストはこうもアドバイスする。

デ「お弁当の値引きをしたらどうですか。(中略)過去のデータからそうした男性客層は“赤牛つけ麺弁当”を意味なく好むことがわかっていますから、これだけを値引き対象にするんですよ」

 過去のデータを分析しつつ、問題を発見し、将来の予測を導く。さらには、顧客が抱える悩みや要望を聞き出すことも、データサイエンティストの仕事なのだ。

 本書の主人公は、新米データサイエンティスト・二項文太。データ分析を武器に、お弁当屋の美人看板娘に統計のイロハを教え、売り上げアップに奮闘するというストーリーだ。数字を用いた難しい計算も多いが、ビールと気温の関係やサザエさんの視聴率など、身近なたとえを挙げながら解説してくれる。

 膨大なデータのなかから、一定の法則を読み解き、過去と未来を予測するデータサイエンティストたち。この職種を目指す人はもちろん、ビッグデータ時代のデータ分析に興味がある人にもオススメの1冊だ。

文=矢口あやは