KDDI「ブックパス」、幻冬舎オリジナル小説の配信を開始

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 電子書籍ストア「ブックパス」では、10月16日からオリジナル小説の独占配信を開始する。オリジナル小説の第1弾を手がけるのは、デビュー作『となり町戦争』(集英社)をはじめ、『失われた町』(同)、『鼓笛隊の襲来』(光文社)、『玉磨き』(幻冬舎)などの著者、三崎亜記氏。電子のみでの連載という珍しい形となる。

 「ブックパス」はKDDIのスマートフォン向けサービスで、キャリアを問わず利用可能。月額590円(税込)で、Android端末であれば7000冊以上、iOS端末であれば2400冊以上の小説、マンガ、写真集、雑誌などを楽しめる「読み放題プラン」と、好きなタイトルを1冊ずつ購入する「アラカルト購入」の2プランが用意されている。

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 16日から三崎氏が発表するのは、最新小説『イマジナリー・ライフレポート』。本作は「読み放題プラン」内で連載され、全12回で、6タイトルを前後編で掲載。毎月上旬に新しい回が追加され、終了は2014年12月を予定している。

 『イマジナリー・ライフレポート』は、前作『玉磨き』と同様、架空のルポライターによるルポルタージュという形式の小説だ。前作が「仕事」をテーマとしていたのに対し、本作のテーマは「人」。1タイトル目は「正義の味方」で、「遥か彼方の星雲」に帰って30年以上が経過し、忘れ去られつつある「正義の味方」について、主人公が取材を重ねていく。

 今後のタイトルは、「今後は、評価が定まってしまった人の人生を別の視点から探ったり、想像もしていない状況に置かれてしまった人が何を考えているかに迫ったりしたいと考えている」(三崎氏)。氏独自の視点で、どんな「人」に焦点があてられるのか、期待したいところだ。

 本連載を記念してauスマートパス会員向けに「玉磨き」(『玉磨き』表題作)を「読み放題プラン」で配信。「『玉磨き』の主人公が、一連の取材をしていくなかで人の面白さに気付き、もっと人について深く知りたいという気持ちからスタートした」(三崎氏)という『イマジナリー・ライフレポート』をより楽しむ助けになるだろう。

 オリジナル小説の配信開始に際し、三崎氏は、「スマートフォンでニュースを読むのが当たり前になっているように、スマホでの読書も日常的なものになる一助になれば」と話し、KDDIの重田光平氏は、日常を少しずつ逸脱しながら展開する三崎氏の作風が「なんとなく読み始めた人にも入りやすく、サービスとも相性がいい。そこから、他の作品にも興味を持ってもらえれば」と期待を寄せる。幻冬舎の永島賞二常務執行役員も、「『イマジナリー・ライフレポート』をはじめとする試みで、新しい読者を発掘したい」と意気込む。

 なお、2014年1月からのオリジナル小説の第2弾には、人気作家8人による描き下ろし恋愛アンソロジーを予定。「読み放題プラン」は、初回登録で30日間無料。電子書籍にまだ親しんだことのない人は、この機会に一度、デジタル読書を体験してみてはいかがだろうか。

文=有馬ゆえ