『ゴールデンタイム』ヒロインの残念美人っぷりがスゴい!

マンガ

公開日:2013/10/25

 今期からアニメが始まり、10月10日には7巻が発売された『ゴールデンタイム』(駒都えーじ:イラスト/アスキー・メディアワークス)。この作品は、ラノベでは珍しく大学を舞台にした恋愛模様を描いている。作者の竹宮ゆゆこはキャラ立ちのいい作家として定評があるが、この『ゴールデンタイム』でもヒロインである加賀香子の残念美人っぷりが話題になっているのだ。誰もが振り返るような美人で大病院のお嬢様なのに、みんなから“残念”だと言われてしまう彼女の残念ポイントとは、どんなところなのだろう?

 まず、とにかく極端で思い込んだら一直線。彼女は幼馴染である柳澤光央に片思いしているのだが、自分では片思いなどではなく、運命だと思い込んでいる。そして、自らが思い描く「完璧なあたしの人生のシナリオ」通りに生きることを望んでいるのだ。だから、柳澤光央以外の人間には一切興味がなく、光央の友達だろうと名前を覚える気はないし、他人のことなどお構いなし。ただ光央のことが知りたくて、友人である多田万里に近づき、光央が履修登録したら情報ちょうだいとか時間割ぜんぶ教えて。「タダとは言わないし」となりふり構わず突き進む。どんなに光央が避けたり拒否しても、「どう考えたって、私と光央が結ばれる以外の結末は間違っているのよ」と強がりでもなんでもなく、本気で思い込んでいるのだ。

advertisement

 また、彼女の場合はその行動もぶっ飛んでいる。光央が香子に黙って受けていた大学の入学式の日、彼女はいきなりタクシーで光央の前に現れ、持っていた深紅のバラの花束を三度、四度と横っ面に叩きつける。そして「……トゲは抜いてあるわ」とにっこり完璧な笑みを浮かべ、またさっそうと立ち去るのだ。それに、実は光央がほかの大学を受験していたことを知っていて、「それを無理にやめさせようと騒ぐより、私がついていけばいいんだって思ったの」と彼が受けた志望校ほぼすべてに、変装までして一緒に受験していたほど。

 そして極めつきは、自分の思い通りにいかないと感情が爆発してしまうこと。光央がほかの女子と話しているところを見ると「私、自分の恋人には他の女としゃべってほしくないの」と詰め寄り、「私がいやがることはしないでほしいの」。「光央の意見なんか聞いてないから。私がいやがることはしないでほしいのって言ってるの。それに従えばいいのよ。たったそれだけのことで、すべてが完璧になるんだから」と自分の意見を押し付ける。相手の女の子に対しても、路傍に転がる猫の糞でも見るみたいに両目を眇め「光央にはちょっかい出さないで。お願いじゃないの命令なの」と言いながら、ハイヒールでしっかり相手のブーツのつま先を踏んだりする。しかし、悲惨なのはそのあとに自分がやってしまったことに気づき、全身からどっと汗をかきながら落ち込んでしまうところ。でも、この不器用さがまた彼女の人間らしい面を引き立ててくれる。

 たしかに、こんな彼女はお嬢様としては“残念”かもしれないが、ひとりの恋する乙女としては、とても魅力的なのかもしれない。

文=小里樹