え? アレを再利用? 性転換手術の驚きの方法

暮らし

公開日:2013/10/27

 テレビの世界では、益々「おネェ系」が増加しているが、SNSで久々に見つけた高校時代の男友達が女性になっていた! なんてこともこれからは珍しいことではなくなるのだろう。奇しくも私はそんな経験をしたひとりだ。彼(彼女?) はずっと性同一性障害に悩んでいたらしく、大学入学後、性転換手術を受け、戸籍上も女性に生まれ変わっていた。どれほど深く悩み、手術を決断したのだろうかと思うと胸が痛くなるが、改めて考えてみると、性転換手術とはどのような手術なのか全く知らない自分に気づかされる。性転換手術とは一体どれくらいの価格や時間が掛かるものなのだろうか。

 ブログ「オカマだけど、OLやってます。」で名高い、能町みね子著『たのしいせいてんかんツアー』(竹書房) には、能町氏が男性から女性への手術をタイで行った際の体験談が明るく描き出されている。人間の一番大事な部分を手術するわけだから大変な費用と時間が掛かるのだろうと思いがちだが、能町によれば、一般的には入院期間は2週間。退院後は1週間程度現地に留まらなくてはならないが、軽い観光も可能だという。

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 手術を受けるためには性同一性障害の診断書が必要なため別途費用は掛かるが、手術自体は保険適応外で日本だと130万円、タイだと60万円程と、意外と安い。能町は、タイで手術することを決め、病院の予約や通訳、空港やホテルからの送迎もやってくれるアテンド会社にツアーを頼んだようだ。

 能町氏曰く、性転換手術では元々ある男性器を「リサイクル」する。一般的に行われる性転換手術は「反転法」と呼ばれるが、男性器の中身の海綿体と呼ばれるスポンジ部分を全部かき出して皮膚をひっくり返し、股に穴を掘り、そこに男性器の皮を上手く貼り付けて女性器のような形にするらしい。だから、ある程度男性器が大きくなくては手術ができないため、手術前は1ヵ月間、ホルモン注射を止めて、男性器の大きさを保たせて手術に望むそうだ。…うう…想像しただけで何とも痛そうな手術である…。本書によれば、今の技術では子宮は作ることは出来ないため、子どもを生むことはできないが、この手術で性的な感覚は保つことができるというのだから驚きだ。

 性転換手術はそれほどハードな手術ではないようだが、持病を持っていた能町氏にとっては、予想外の連続だったらしい。打たれたモルヒネの副作用なのか、手術後に失神したり、幻覚や便秘に苦しめられたり、3週間のタイでの生活は多難の連続だったという。だが、入院した病院では、外国人はVIP待遇なのか、日本だと絶対入院できないような広い個室に入院できた上、テレビはNHKが映るし、通訳もいる。おまけに、同時期に4人も日本人が入院していたため、異国とはいえ、それほど強い不安に襲われることはなかったようだ。能町が入院した病院では、同じ国の人の入院を同時期にするという方針だったようで、能町氏も他の患者と交流しながらどうにか入院生活を乗り切ったらしい。

 だが、退院後もすぐに日常生活に戻れるというわけではない。ピアスの穴と同様に、身体に開けた穴は放っておくと塞がってしまう。だから、手術後6ヵ月間は、患者は「ダイレーター」という棒を1日に3回、1時間ずつ身体に入れることを習慣としなくてはならない。しかし、このような手術を乗り越えることができれば、戸籍上でも女性となることが出来る。ホルモン注射にも保険が下りるようになる。手術が終わった時はもちろんだが、戸籍で女性となれた時、能町氏はより深い喜びを感じたのだという。

 

 能町氏はあまりにもあっけらかんと入院生活について語っている。もしかしたら、今までの辛い日々を思えば、手術など大したことがないものだったのかもしれない。苦悩から解放された喜びがそこにはある。日本には性同一性障害者はどのくらいいるのだろうか。彼女達がもっと彼女らしく生活できる環境が日本でも整うことを願うばかりである。

文=アサトーミナミ