ドラマ『ダンダリン』でにわかに注目を集める「社労士」の正体とは?

業界・企業

更新日:2013/10/28

 働く人を守るルールを遵守するためには決して曲がらない女、労働Gメン・段田凛(ダンダリン)に扮する竹内結子が気を吐くドラマ、『ダンダリン』(日本テレビ系)が好調だ。

 主人公は、全国5200万人の「働く人」のために「安心して働ける社会」を目指す労働基準監督官。「サービス残業」「名ばかり管理職」「労災隠し」等々、現在産業界で問題になっているトピックを題材にした、まさに「働く人」必見のドラマ。原作は人気コミック『ダンダリン一○一』(鈴木マサカズ:著、とんたに たかし:原著/講談社)だ。

advertisement

 先日OAされた第4話では、業績不振のための「内定切り」として学生に理不尽な内定者研修を課し、自主的な内定辞退を促すブラック企業がフィーチャーされた。これまで毎回、力技で問題解決してきたダンダリンだが、この回は学生たちを救い問題を解決したかと思いきや、法には限界があり、代わりに犠牲になった人事部長を救うことはできなかったという苦い顛末だった。

『ダンダリン』を見ていて、改めてふと、気づいたことがある。

「そういえば、私たち労働者って、法で守られているんだったっけ(実際にはあまりそんな自覚はないけれど…)」

 その一方で、こんなことも気になってくる。

「社労士(社会保険労務士)って、働く人の味方なの? それとも企業や社長寄り?」

 『ダンダリン』に登場するのは、会社経営を成り立たせるためには手段を選ばないタイプの社労士たちだ。そこで、社労士の仕事の一端をうかがい知ることのできる、対照的な2冊をご紹介してみたい。

 まずは企業を守るスタンスの社労士による、『労働基準監督署の調査・対策・対応マニュアル [Kindle版]』(竹内 睦/竹内社労士事務所)。労働基準監督官には、労働基準法101法等により、事業場への立ち入り調査(「臨検」や「監督」と呼ばれる)や、悪質な事業主を逮捕、送検する権限が与えられている。ドラマでも彼らは予告なしに、ターゲットの企業を訪れる。そこで踏み込まれた場合、いったいどのように対応すればよいのかを、経営者サイドの目線から解説されているのがこの本だ。

 著者によると、監査官がやってきたら、まずそれが「定期監督」なのか「申告監督」なのかを見極めよとのこと。「定期監督」とは一般的な調査のことで、「申告監督」の場合は、労働者からの申告があった場合の調査である。一見、見分けがつかないものの、「ある日突然」調査に来たら、後者の「申告者がいる」可能性を疑ったほうがよいそうだ。

 申告者は通常、不当解雇や残業代未払いなどの是正を求めて申告するため、監査官の対応はおのずと厳しくなる。経営者にとって最も重要な「監査官はココを見る!」(ex.時間外・休日労働に関する協定届け、36(サブロク)協定のチェックポイントなど)については本書にゆずろう。

 ちなみに著者の竹内氏によれば「労働基準法をはじめとする様々な法律は、労働者保護の観点でつくられている。しかし、社長を守る法律はない。そんな社長をバックアップしたい思いから“社長を守る会”を発足させた」とのことだ。

その、労働者を守る法律をガイダンスするのは『知らなきゃ損する職場の法律~問題社員と言われないために~プライバシー侵害・経歴詐称・労働災害・副業 [Kindle版]』(曽利和彦/バレーフィールド)だ。

 こちらの著者、曽利氏も同じく社労士である。氏は25歳のとき、勤務先で労働トラブルに巻き込まれて退社に追い込まれ、独学で労働法を学んで交渉、問題解決した経験をもつ。その体験から「会社員として労働法を知っておくことは重要である」と考えて、社会保険労務士資格、特定社会保険労務士資格を取得。現在は労働トラブルの解決に尽力している。

 こちらの本は、(1)正社員として会社に雇われている人、(2)人を雇って会社を経営している人の、双方を対象に書かれている。職場は、雇う側と雇われる側が同居する環境。しかし互いの利益が相反するため、トラブルの発生が否めない。ということで、身近に起こりうる5つの職場トラブルをマンガを用いて解説している。

1章 会社は従業員にひげや茶髪を止めるように命令できるのか?
2章 会社辞めますか? それとも副業辞めますか? 知らなきゃ大変「副業規定」
3章 上司が部下の電子メールを見たらどうなる? プライバシーの侵害とモニタリング
4章 大学中退を高卒と言って入社! 経歴をごまかして採用された社員の結末は?
5章 会社のスポーツ大会で大怪我! これって労働災害になるの?

 主人公が職場のトラブルに巻き込まれる様子をマンガで描く→労働法の解説は文章で→解決編をマンガで、と、法律バラエティの再現ドラマさながらの構成が読みやすく頭に入りやすい。「常識で考えても解決がつきそう」な題材も入っているが、これまで小難しい印象のあった労働法について勉強する導入としては、手ごろかもしれない。

 社労士は経営者の味方にも、働く人の味方にもなりえる存在である。ということを頭に入れて、ドラマの今後の展開に注目しよう。

文=タニハタマユミ