着メロは「津軽海峡冬景色」、勝負服はコスプレ!? 日本語を学ぶ外国人学生たちが教えてくれること

コミックエッセイ

公開日:2013/11/1

 以前、ネットで日本を訪れたことのある外国人が菓子パンを絶賛していたのを見たことがある。菓子パンは菓子パンでも、彼らが感動しているのはコンビニなどで売っているアレ。なかでも大人気だったのは、メロンパンである。

 確かに、クッキーとパンを組み合わせたメロンパンはうまい。チョコチップだとなおよい。しかし、外国人が大絶賛ってウソでしょー? などと思っていたら、ある本で「日本で気に入ったものを聞くと、やたら“メロンパン”という回答が…」なる証言に出合ってしまった。

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 その本とは、『日本人の知らない日本語』4巻(メディアファクトリー)だ。マンガ家の蛇蔵氏と日本語教師の海野凪子氏がタッグを組んだコミックエッセイで、1~3巻では日本国内で日本語を学ぶ外国人の“独特な日本語”を紹介していた。

一方の4巻では、2人が海外へ! フランス、ベルギー、イギリスなどヨーロッパの国々で日本語を学ぶ外国人のエピソードが紹介されている。

フランスの学校ですれ違った女子学生のケータイの着メロが『津軽海峡冬景色』だったり(彼女は氷川きよしと大泉逸郎の大ファン)、ベルギーの男子学生は「“轟”はすっごくすごそうなのに、新聞などで“ごう音”と書くのはやめてほしい!」と主張したり、ドイツの男子学生はテストのみ“勝負服”としてコスプレ服を着て登校したり…と日本が大好きな彼らの姿は愛らしい。

 爆笑必至なのは、かのフロイトも真っ青な言い(?)間違いの数々だ。たとえば、下記のような例。それぞれ、何と言い間違えているかわかるだろうか?

(1)「チェコの田舎ってどんなところですか?」との問いに「“便秘”なところです」とチョコの学生がニッコリ
(2)人名の書かれた紙を読み上げたドイツ人学生。ハッとした顔で「“やまぽん”さん!」
(3)「“魚”が好きなので、風で“魚”が飛ばされて、“魚”でいっぱいになった道を歩きたい」とドイツ人学生がウキウキした表情で力説
(4)「私は日本の“エロドラマ”が大好きです!」と熱っぽく語るオーストリアの学生
(5)ベルギーのお城の地下室にあった日本の壺の名は“E‐mail”

 答えは、(1)が“辺鄙”、(2)が“やまもと”、(3)が“桜(さくら)”、(4)が“メロドラマ”、(5)が“伊万里”。(1)~(4)までは「惜しい!」という気もするが、“伊万里”が“E-mail”に変換されると、さすがに「ないない」と言いたくなる。しかし、コレも事実だというのだ。

 ほかにも爆笑エピソードは数々あるが、他方で「下手をしたら彼らの方が日本語や日本について、深く知っているのではなかろうか?」という疑問を抱いてしまう。演歌、アニメ、アイドル、新幹線…と入り口はさまざまだが、海外で日本語を学ぶ彼らの「知りたい」という情熱はとても強い。

 だからこそ出てくる疑問――「“親切”って、なぜ“親を切る”って書くんですか?」に、あなたは正確に答えられるだろうか? 本書は、笑って外国人たちをいとおしみながらも、自分たちが知らない日本語の世界を垣間見せてくれる。もしかしたら、日本について一番知らないのは、日本人だったりして、ね?

文=有馬ゆえ