感涙必至 大ヒット中の子猫写真集「わさびちゃん」とは

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 くりくりと大きな目と小さな身体。誰もが「かわいい!」と声をあげてしまいそうな子猫の名前は、わさびちゃん。いま、子猫わさびちゃんの写真集『ありがとう! わさびちゃん』(わさびちゃん/小学館)が大ヒット中。そして、「涙なしに読めない」と大反響を呼んでいる。というのも、この本は小さな子猫の“介護記録”でもあるからだ。

 わさびちゃんが飼い主である「父さん・母さん」夫婦に保護されたのは、生後2~3週間目のこと。ある日、自宅で猫の凄まじい悲鳴を聞き、外に飛び出た母さんが見たのは、カラスに襲われ血だらけになっている茶色の子猫。駆けつけた父さんがカラスを追い払ったものの、「辺り一帯は血で染まり、肉片のようなものも飛び散っていました」というほどの惨状。当然、子猫もぐったりとしていたという。

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 父さんと母さんによって、なんとか動物病院で診療を受けた子猫。不幸中の幸いか、「子猫の傷は主に口の中」だったようで、身体はほとんど無傷。しかし、レントゲンを撮ると、上あごの骨はバラバラに砕け、下あごも左右に分離してぐらぐらの状態。後に、上あごの内側は穴が空いており、舌も裂けていることが判明した。

 自力で食事ができない子猫のために、カテーテルを使ってミルクを与えることとなった父さんと母さん。4時間おきにミルクを与えなくてはいけない上、舌が気道を塞がないよう、片時も子猫のそばを離れられない……。家族総出で猫の看病にあたった記録からは、小さな命を守ろうとする懸命な姿が伝わってくる。

 そんな子猫も、介護の成果で徐々に体重も増加。「わさび」と命名され、自力でうんちができるようになったり、ソファにジャンプできるようになったり、爪を研げるようになったり……そんなひとつひとつの“当たり前”ができるようになる過程は、まさに感動的。急な発作に襲われる日もありながら、先住犬であるゴールデンレトリーバーのぽんずを追いかけ回し、父さんと母さんから「暴れわさび」と呼ばれるなど、どんどん元気になっていくのだが……またも突然の発作に襲われたわさびちゃんは、保護されて87日目に、その短い生涯を閉じた。死因は急性肝炎の疑いが濃厚ながら、はっきりとした要因は不明のままだという。

 先天的な疾患が原因なのか、それともカラスの攻撃を受けたせいなのか、早すぎる死の理由はわからない。それでも、保護した父さん・母さんを始めとする家族がわさびちゃんを心から愛し、懸命に生きようとする姿を温かくサポートしたことが、わさびちゃんにとってどれだけ幸運で幸福だったか。本書はわさびちゃんの写真がたくさん掲載されており、インコやわんこと一緒に眠ったり、お手製ニットに身を包むわさびちゃんもかわいいのだが、ミルクを自分の力で舌に運ぶという普通では何気ないその姿が、ただただ愛おしくなる。

 母さんがつくったというわさびちゃんのTwitterは、現在フォロワー数が約12万。本書は多くの人がネットを通じて見守ったわさびちゃんの“生の証し”といえるもの。猫が好きな人はもちろん、これから猫を家族に迎えたいと考えている人には、ぜひ一読してほしい1冊だ。