『トレスポ』原作者による新作映画 J・マカヴォイの鬼畜刑事に釘づけ!

映画

公開日:2013/11/7

 アラサー以上の人なら心を奪われた映画の一作だろう。1996年公開の『トレインスポッティング』。スコットランドを舞台に、ドラッグに溺れる若者の日常をライブ感ある映像や音楽とともに描き、世界中で旋風を巻き起こした。高2のときに観た私には作品すべてが刺激的でカッコよく、映画のメッセージを「今を全力で楽しめ!」と誤解(?)し、部活を辞めたほどだった(半分本当です、笑)。

 観る人の心を確実にとらえた『トレスポ』の原作者、アーヴィン・ウェルシュの最新映画が『フィルス』。『トレスポ』の悲惨だけど陽気なあの感じを思い出した。ジェームズ・マカヴォイ演じる刑事がある殺人事件を追うクライム・コメディなのだが、この刑事がとんでもない悪党で。職場での昇進レースで同僚を出し抜くため、同僚の妻と不倫するわ、卑劣な裏工作をするわ……。喧嘩、ポルノ、売春、アルコール、コカイン中毒……と道徳のかけらもない。だけれども、頭の回転が速く、毒舌とユーモアにカリスマ性があって、憑依されそうなほどイイ感じに仕上がっている。下衆野郎に愛らしさを吹き込んだマカヴォイは本当に見事!

advertisement

 『トレスポ』のダニー・ボイル監督は、公開から20年を経た2016年に続編の撮影を始めると明言している。原作は続編小説『ポルノ』でキャストも再結成させる予定とか。『フィルス』はそのプロローグといえるかも。

文=平山ゆりの(日経エンタテインメント!)/ダ・ヴィンチ12月号「出版ニュースクリップ」