書店員オススメ! 短いけれど心に残る、珠玉の短編集

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 毎日膨大な量の本に接し、本の知識なら誰にも負けない“本のソムリエ”としてとっても頼りになる書店員さん。そこで今回は、三省堂書店大宮店で文芸、文庫、新書を担当する書店員歴11年目の神原美菜さんに“短いけれど心に残る、珠玉の短編集”をセレクトしてもらった。

ここがウィネトカなら、きみはジュディ』 大森 望/編 ハヤカワ文庫 987円
時間ものだけ集めたSF短編集。SF初心者の人でも、時間といえば人の内面と密接につながっている身近なテーマなので、ぜひトライしてみてほしいです。バリエーションの多彩さも驚きです。

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カソウスキの行方』 津村記久子 講談社文庫 480円
お互い心底弱っているので、そばでなぐさめ合うのでなく、距離感を保って「あの人もなんかがんばってるな」くらいに気にし合うほうがありがたい……そんな男女の話。さりげない優しさに笑えて泣けます。

レキシントンの幽霊』 村上春樹 文春文庫 480円
個人的な読みかたですが、村上さんの短編は物語の余韻が風景として心に残ります。読むたびにそれが更新されたり変わらなかったりするのが面白いです。「めくらやなぎと、眠る女」がマイベスト。

家守綺譚』 梨木香歩 新潮文庫 420円
死んだ友人から古い家を託された青年が、庭の草花や生き物や死んだ者たちと語らう暮らしがすごく自然なありようとして描かれる不思議な作品。緑深く空気が澄んでいそうで憧れます。

ようこそ地球さん』 星 新一 新潮文庫 662円
超短編のショートショート。ほんの数ページで読者のものの見方や感じ方をがらっと変えてしまいます。アイデアの意外性と無駄のない語りでどんどん読みたくなります。一編一編に大作の余韻!

ダ・ヴィンチ12月号「本のソムリエ」