『うる星やつら』は妖怪だらけ!――京極夏彦×高橋留美子妖怪対談

マンガ

更新日:2013/11/13

 今年でデビュー35周年を迎えるマンガ家・高橋留美子。『めぞん一刻』『うる星やつら』『らんま1/2』『犬夜叉』など、絶えずヒット作を世に送り出し続けている彼女の作品には、どの年代でも男女問わずなにかしら触れていることだろう。『ダ・ヴィンチ』12月号では、高橋留美子を大特集。表紙はなんと、高橋留美子描き下ろしのラムちゃんイラストだ。

 表紙を飾る芸能人はかならず好きな本を手に映る、という『ダ・ヴィンチ』の伝統にのっとり、ラムちゃんが手にしているのは京極夏彦の『豆腐小僧』。高橋さんの愛読書である。実は、京極さんも高橋さんもお互いの作品の大ファンで、作品も読み込んでいる同士だ。同誌ではそんな二人の豪華対談が実現している。

advertisement

【京極】 ずっと気になっていたんですが……高橋さん、妖怪お好きですか? 『うる星やつら』はある意味妖怪だらけだし、『犬夜叉』は妖怪マンガですよね。

【高橋】 好きですよ。子どもの頃、世間が妖怪ブームだったんですよ。ちょうど『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメが放映されていて、テレビでも雑誌でも妖怪が溢れているような時代でした。それが刷り込まれているせいか、意識しないでも自然と登場させてしまうんです。

【京極】 そうですか(喜ぶ)。高橋作品は妖怪方面の人たちが思わず反応してしまうようなアイテムがてんこ盛りなんですね。最初期の『うる星やつら』は鬼に河童に悪魔に天狗、そして雪女と、毎回妖怪だらけでしたし。といっても『うる星やつら』は水木しげる直系というわけではない。基本ラブコメディですから。当時の感覚では、水木しげる的な世界観とラブコメは結びつかなかった。水木さんの絵柄だとどう転んでもラブコメにならないですから(笑)。

【高橋】 そうなんです。妖怪マンガのベースを作られたのは水木先生。『うる星やつら』はその真似にならないように、なんとかすき間を見つけて描いたという感じですね。だから、妖怪の知識なんかはわりといい加減で、京極先生にお会いしたら叱られるんじゃないかと(笑)。

【京極】 今でこそ、鬼が美少女だったり、死神が美少年だったりしても当たり前ですが、『うる星やつら』以前にそういう感覚ってほとんど存在しなかったと思う。水木的な要素を使ってこんなことができるんだと、本当に衝撃を受けました。しかもSFの要素もある、学園ものでもある、スラップスティックなギャグもある。本当にエポックメイキングな作品だったと思います。

【高橋】 いろんなマンガ家さんの影響がごちゃ混ぜになっているだけなんですが、確かにああいう「全部載せ」みたいな作品ってなかったかもしれませんね。

【京極】 僕は小説の作り方を水木マンガから学んだという自覚があるんですが、それだけだと「水木しげるを小説に焼き直しただけ」のものになってしまうわけで、そんなもの要らないですね(笑)。変換にあたって、やはりいろいろな作家さんの影響を受けているわけですが、どうも高橋作品から学んだことというのは大きい気がします。水木ベースをアレンジする基本ソフトとして『うる星やつら』を使用していたのかもしれない。「水木しげるを高橋留美子経由で小説にしている」と考えるとしっくりしますね。

 同誌ではほかにも、好きなキャラクター談義や、キャラクターの描き方について、濃くも深い話が展開されている。

取材・文=朝宮運河/ダ・ヴィンチ12月号「大人の高橋留美子だっちゃ!」特集