女性を口説くためのバイブル『新東京いい店やれる店』の猛禽女的活用術

恋愛・結婚

更新日:2013/12/11

 人気漫画『臨死!! 江古田ちゃん』(瀧波ユカリ/講談社)に描かれる女の天敵”猛禽”系女子をご存知だろうか。肉食系女子と猛禽系女子の違い。それは、肉食系女子がいかにも恋愛に積極的に見えて、時節男性に引かれるのに対して、異性ウケする猛禽系女子はより思慮深く行動し、一見おとなしそうに見せつつ狙った獲物は離さないこと。もしも、ゴールインを望むなら、なんとしてでもホールドした獲物を生かしたまま自分の巣屈に持ち帰らなければならない。いわば肉食系女子は猛禽系女子への脱皮を図ることが最重要課題なのだ。

 毎夜つるんでいるのは獲物男ではなく同じ穴の狢女ばかり。そんな社会的肉食系女子は特に危険。”平日がんばり屋の自分”を理由に、休日ヨレヨレのパーカーで近所の大衆居酒屋へおもむき、タコ酢やキムチを割り箸でつつきながら「運命の男はどこっ!」と、大将相手に濃いめの緑茶ハイをすすっている場合じゃない。

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 『新東京いい店やれる店』(ホイチョイ・プロダクションズ/小学館)は、そんな女の原点に立ち返らせてくれる良書である。まず目に付くのがその真っ赤な帯。白文字で「エロ本です。」とデカデカと書かれてある。若い男に若い女をかっさられてはならぬという、M2世代である著者の並々ならぬ意気込みが感じられ、非常にむさ苦しくてよいではないか。まさに少子高齢化社会の鏡のような本。ぜひ、日本図書館協会選定図書に選ばれてほしい。

 さらにこの本、「35歳以上の紳士専用」なのだそうで、女性の購読を堅くお断りされている(笑)。「ここに書かれた内容は、スポーツジムの男子更衣室や、ゴルフ場の男風呂で交わされる会話のようなもの」「そういう本を女性が覗き見するのは、一種の痴漢行為に等しい。」と中二病的な理由が列挙されているのだが、これがまた母性本能をくすぐられる。肉食系女子の殻を破り、猛禽系女子へと変貌したいオトナ女子たちは、こうした中二病男子特有の「”やる”ために必死だけど、必死だとバレるのはプライドが傷つく」という複雑な心理を先回りしてケアしなければならない。

 そう、肉食系女子と猛禽系女子の大きな違いは、犬でいうところの「待った」ができるかできないか。「チンチン」に対して、「待った」ができる女。これが私たちの目指す理想の猛禽系女子の姿だ。

 さて本題。同書では、女子が喜ぶ「やれる店」を以下の8つに定義づけている。1)内装のセンスがいい、2)照明が暗い、3)店が小さい、4)2人の席が接近している、5)夜景が美しい、6)世間の評価が高い、7)客層がいい、8)意外な場所にある、だ。著者いわく、これらはいずれも女性の心に”トキメキ”を与えるファクターなのだそう。「血を吐く思いで女たちを店に連れて行き、命の限りに口説き倒した」著者がいうのだから、きっとそうなのだろう。

 正直なところ、照明が暗い店に行きたいのは化粧崩れをごまかすためだし、内装や夜景のいい店は維持費が高いぶん、コスパが低くてまずい店が多いけど、とりあえずそういう店に誘われたら、歓喜に満ちた表情を瞬時にできるよう、日頃からトレーニングを重ねておくことが大切。その証拠に登場する店は、西麻布や白金といった業界人やセレブが好む土地柄ばかりだ。中野も立石も戸越銀座も一切出てこない。ちなみに今流行りの立ち飲みバルも30代以降は避けたほうがよさそう。そういう店に何時間もいる女はたいてい腰まわりの太い30代のおばさんとはっきり明記されている。なかなかカチンとくる文脈だが正論だ。

 また、「季節限定」の誘いは男のよこしまな下心を覆い隠し、好印象を与えるという理由で、同書は味よりも「季節感」に徹底的にこだわっている。あえて苦言を呈するなら、著者が推す「食の知識をひけらかす男」ほど、女にとって面倒くさい男はいない。しかし、猛禽系女子を目指すなら、それもさらりと受け流す余裕を。ちなみに11月の旬食材は、古代ローマで備淫剤として珍重されていたトリュフだ。狙ったキノコをキノコで制する。この時期、そんなデートも悪くない。

文=山葵夕子