読む江戸時代の「ごちそうさん」? 蕎麦、寿司、てんぷら……江戸の料理を描いた時代小説

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 ここ数年、巷では、歴史・時代小説が熱い。書店には文庫オリジナルの作品がずらりと並んでいる「歴史・時代小説なんて、お年寄りのものでしょ?」というアナタ。いやいや、“喰わず嫌い”の門をくぐった先には、百花繚乱の世界があるのだ!

 『ダ・ヴィンチ』12月号では、圧倒的作品数を誇る「江戸時代」を舞台にした歴史・時代小説を特集。「料理」「ミステリー」「恋・青春」をキーワードに、日本人の原風景でくりひろげられる秀逸な物語たちを紹介している。

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 江戸時代は、「泰平の世」。戦の恐怖から解放された庶民たちが、自らの手で生活文化を築いた。そんななかで、もっとも身近で現代に通じるジャンルが、「料理」だろう。

 蕎麦、寿司、てんぷら、豆腐料理……、日本の食文化の原型をつくったともいえる「江戸の料理」は、食べたことがないはずなのに、どこか懐かしくて、それでいてとても新鮮! 素朴なのに、とても豊か。本を読みながら、「こんな料理を毎日食べて、暮らしたい!」と夢想する人も多いに違いない。

 さらに、“お江戸料理本”の魅力は、料理だけにあらず。そう、心ひかれる「料理人」たちの存在も、このジャンルならでは。考えてみれば、お江戸の料理は、今以上にすべてが「手作り」。だから、作るプロセスに物語があり、それが、作り手や周囲の人々の人生模様とシンクロし、さらに豊潤な物語となるのではないだろうか。

 そんな作品の代表格ともいえるのが、『この時代小説がすごい! 2012年版』で圧倒的な人気でトップに輝いた人気シリーズ「みをつくし料理帖」シリーズ。女料理人を主人公に現在8作が刊行されている同作は、若者、女性など、時代小説に縁のなかったファンにも支持層を拡大中だ。もちろん、この作品の主人公以外にも、お江戸の個性豊かな料理人たちを描いた作品が続々。いなせで陰のある男性料理人も健在。あなた好みの料理人を探してみては?

■『残月 みをつくし料理帖』髙田 郁 ハルキ文庫 650円
大坂で料理人として育てられた少女・澪は、江戸の「つる家」で働くことに。別れた友との再会や周囲の人々の幸せを願い、料理とひたむきに向き合う澪に訪れる数々の困難、切ない恋。女料理人の物語、結末近し!

■『蓮美人 料理人季蔵捕物控』和田はつ子 ハルキ文庫 620円
21作が刊行されている人気シリーズ。武士から転身、料理屋「塩梅屋」で働いている季蔵。店の主人から裏の役目も引き継ぎ、数々の事件に立ち向かうことに。数々の料理とともにアクションも楽しめる。

■『包丁人侍事件帖 くらやみ坂の料理番』小早川 涼 学研M文庫 670円
舞台は、江戸城。台所人として城の食事を預かる鮎川惣介は、将軍・家斉に命じられ、密かに江戸城や大奥に渦巻く陰謀を探索することに。惣介の前に立ちはだかる奇怪な事件の数々。謎解きの醍醐味も楽しめるシリーズ第6弾!

■『すかたん』朝井まかて 講談社 1680円
江戸娘・知里は、夫の大坂赴任に伴って浪速の地に。夫を亡くし青物問屋に勤めることになり、次第に「天下の台所・大坂」の食の豊かさに目覚めていく。そして、恋も……。江戸と上方の食の対比も楽しい長編作。

構成・文=梅村千恵
(『ダ・ヴィンチ』12月号「秋の夜長にどっぷり浸りたい歴史・時代小説」より)