小学1年から問題行動!? 日本特有の“小一プロブレム”なぜ起こる

社会

公開日:2013/11/19

 授業中に歩き回ったり、先生に注意を受けてもお喋りをやめないなどといった“学級崩壊”が社会問題として取り上げられてから十数年。教育現場ではさまざまな取り組みが行われているようだが、その根本的解決にはいまだ至っていない。しかも、学級崩壊に導く“問題行動”を起こすのは、中学や小学校高学年の児童だけではない。入学してホヤホヤの小学1年生から、現在の学校は深刻な状況にあるのだ。

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 先日発売された『本当は怖い小学一年生』(汐見稔幸/ポプラ社)によると、椅子にじっと座っていられず教室内を歩き回ったり、配ったプリントを紙飛行機にして飛ばしたりといった行動を起こす小学1年生の問題を、教育界では“小一プロブレム”と呼ぶという。2010年度の東京都教育委員会の調査によれば、こうした「不適応状況の発生」は、4月がもっとも多い71.8パーセント、11月地点でも56.7パーセントの学校が「(状況は)現在おさまっていない」と回答。東京に限った話ではなく、全国で“小一プロブレム”は起こっているらしい。

 しかも、この“小一プロブレム”は「日本特有の現象」で、海外ではこのような報告は見られないという。じつはここに、日本の保育園の受け入れ態勢の問題点が浮かび上がってくる。

 というのも、日本の幼稚園は平均で200~300人、保育所であれば平均100人前後の子どもを抱えている。そして国が定めた規定では、幼稚園では1人の先生が最大35名、保育所で4~5歳児は1人の先生が30名を受け持つことになっているという。一方、ヨーロッパでは、3歳以上の子どもを受け持つ数は、先生1人につき「せいぜい15名くらい」。ニュージーランドでは1つの保育所の定員が50名以下である。このように少人数であることで「大きな家族」のような集団となり、「みんなで分担しながらうまく行動する」ようになる。先生に指示されなくても子どもたちは子どもたちで一定の秩序をつくり上げ、「自分だけ騒ぐと目立ってしまうな」「今は座ったほうがいいな」と、それぞれが日々、規律を発見し身につけていくのだという。

 対して、大勢を一人で見なくてはいけない日本の場合は、先生が頻繁に指示を出さなくてはならず、かつ、子どもたちに一斉に同じことをさせることも増えてしまう。この状況下で、日本の子どもたちは「指示されたら動けばいい」というように適応してしまう……というのだ。著者は、こうした日本の幼稚園や保育園の環境は、自分で規律を求めるという「自律的な秩序感」が芽生えにくいと指摘。「年齢にふさわしい秩序感」が育たないまま小学校に入学してくるため、小一プロブレムのようなことが起こりやすくなるという。

 もちろん、遊びをベースにしながら学ぶ幼稚園や保育所の“体験型”から、小学校ではガラリと変わっていきなり座学となってしまう点にも“小一プロブレム”の原因はある。この点でも、海外では幼稚園・保育園と小学校の間に座学を体験して徐々にならしていく期間を設けていることがあるが、日本では設定されていない。このような問題を著者は挙げ、「教室に座っていられない子どもたちの問題ではなく、そういった旧来の学びスタイルを今世紀になっても続けていることから起こる問題ではないか」と述べている。

 この問題は、小学1年生にとどまらない。学びの根底にあるのは、自ら疑問を感じて考え、発見に至る過程の喜びだ。果たして現在の日本の教育システムがそのことを伝えられているのか。“小一プロブレム”が問題化している今こそ、見直しが必要なのではないだろうか。