実家が汚屋敷に!? 親の家の片付けに悩む人が急増中! なぜ老人の家は片付かないのか?

社会

公開日:2013/11/19

 最近、「親の家の片づけ」に頭を悩ませ、年末年始の帰省が憂うつという人が増えている。未曾有の高齢社会といわれる現代ニッポン。孤独死、独居高齢者、介護など高齢社会の問題は山積みだが、「ゴミ」問題もまた実はこうした高齢者問題のひとつだ。メディアでも度々取り上げられるが、異常な量のゴミが庭や道路にまで溢れるいわゆる“ゴミ屋敷”が全国に多数存在し、その住人の多くが独居老人だという。「ゴミ屋敷」まではいかなくても「片づけられない老人たち」の問題は年々深刻化しているそう。

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 足の踏み場もない部屋、汚物も散乱している。そんな高齢の親を見かねて子供や親戚が掃除しようとしても、嫌な顔をされたり、拒否したり──。この現象は男女をも問わないらしい。

 しかし一体、老人たちはなぜ「片付けられない」のか。なぜ年をとると「片付けられなくなる」のか。それを『ご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす』(佐藤眞一/光文社)から読み解いてみよう。

 そもそも年をとると、その人が若い頃にはなかったような、さまざまな特徴が見られるようになる。妙にポジティブで有能感を持っていたり、都合のよいことしか憶えていなかったり、人の言うことを聞かなかったり……。そのひとつが孤独感だ。そして、ゴミ問題の根本にもまた“孤独感”があるという。

 「人はもともと社会的な存在であり、社会との関わりをまったく持たずに生きていくことはできません(略)ところが何らかの事情で孤立してしまうと、その原因が自分にあったとしても、受け入れられたいという欲求をはねのけられたと感じ、“社会から拒絶された”と思い込み、怒りと孤独感を感じ」てしまうのだという。

 さらに孤独感から反社会的行動に走ることも。その代表例がゴミ問題なのだ。きっかけは小さいことが発端だったりするらしい。たとえば「空き瓶や飽き箱を捨てるのがもったいない。ずいぶん前に買ったお菓子だけれど、まだ食べられるから取っておこう」というような。

 しかし、若者ならある程度ゴミが溜まるとがんばって捨てようとするが、老人になると体力的に厳しいことも。ゴミの分別も一苦労。挙句に分別されていないので、自分のゴミだけ回収されず、腹立たしく家に持ち帰るが、何が悪いのかもわからない。そんなことが続くと「ゴミを捨てる気力も失せ、“なぜ自分だけ意地悪をされるのか”“誰も助けてくれない”“周りはみんな敵だ”と、孤独感を募らせ、しだいに頑なに、反社会的になっていったとしても不思議ではありません」というわけだ。

 こうして徐々にゴミは溜り、近所から苦情が来ても、逆に「いい気味だ」とほくそえんだり、ときに逆ギレしてしまったりすることもあるという。そして、気づけばゴミ屋敷に……という事態にまで至ることも。

 こうした老人ゴミ問題に対策はあるのか? 著者が提言するのは「互恵的利他主義コミュニティ」である。これは「誰かを助けます。そして私は別の人に助けてもらいます。だからお返しは結構です」という考えらしい。老人のゴミの分別を誰かがサポートすれば、少しは孤独感も解消され、コミュニケーションも持てる。ゴミ屋敷問題のかなりが解決するだろうと筆者は言うのだ。

 確かに理想だが、もうひとつ大きな問題が存在する。それは老人の多くが「人の世話にはなりたくない」と思う「自立神話」である。しかし自立できないからこそ老人へのケアや介護があるわけで、「自立神話」は矛盾したものだ、と筆者は言う。よって自立神話に惑わされることなく「年をとって心身が弱ったのなら、人の世話になっても」よく、「人に上手に依存できるかどうかが、人生の最終章を幸福に送れるかどうかに関わっているのです」と結論付ける。

 人間は誰しも老いる。今後も増え続けるであろう高齢者のごみ問題。親や身近にいる老人をゴミ溜めで生活させないためにも、周囲が早期に異変に気付き、プライドを傷つけることなく、さりげなくサポートすることが必要なのかもしれない。