すごい、しびれる、食べてみたい。厳選食べ歩きエッセイ

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 食欲の秋も終盤戦。そしてもうすぐやってくるのは忘年会&新年会シーズン。暑さでバテやすい夏とちがって、これからは食欲も増加しはじめる魔のシーズンだ。しかし、おいしいは嬉しい、おいしいは幸せ。食への欲求は我慢できない! そんな人におすすめするのが「食欲と読書の秋(と冬)」だ。『ダ・ヴィンチ』12月号では、読んでいるだけで、おいしい料理を食べたような満足感や癒やされ感を得られる「おいしい文庫」を特集している。

 なぜ人は、“おいしい”に出会うと笑顔になるのだろう。そもそも“おいしい”には、どんなチカラがあるのか? 料理がテーマや隠し味になっている小説、料理エッセイ、食べ歩き、レシピ本など、おいしい文庫を料理研究家・林幸子さんとともに紹介。ここではそのなかからエッセイ&食べ歩き本4冊を掲載する。

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<おいしいエッセイ&おいしい食べ歩き>

■『ホルモン焼きの丸かじり』 東海林さだお 文春文庫 557円
 森鷗外が愛した饅頭茶漬けにチャレンジしたり、鰻重をグジャグジャにして食べてみたり、ホルモン料亭に行ってみたり、ゴマの無念さを憂いてみたり。くすくす笑って、そーだよねと納得。ショージ君の「丸かじり」シリーズはおいしいとおかしいにあふれている。

■『文士の料理店(レストラン)』 嵐山光三郎 新潮文庫 704円
 森鷗外、永井荷風、岡本かの子、池波正太郎、山口瞳ら22人の文士が愛したレストランを、文士たちがなぜその店を愛するのか、当時の暮らしぶりも含め、嵐山流の味つけで紹介。 そば、洋食、牛鍋、割烹、いわずと知れた名店と、それぞれの名物料理も掲載されている。

■『銀座のすし』 山田五郎 文春文庫 525円
 江戸前の握りずしは、屋台で出す庶民のファストフードだったはずなのに、いつからミシュランで三つ星がつくようになったのか? そんな疑問から始まる本書は、“銀座”という独特の街で育まれた、すしの変貌と変革を、23の名店の成り立ちと今で教えてくれる。

■『ことばの食卓』 武田百合子/著 野中ユリ/画 ちくま文庫 672円
 武田泰淳が「口中で枇杷をもごもごまわし」ながら食べる様。「お雑煮を充分に食べたら、しんしんと眠気が襲ってきた」様子。記憶の匂い、感性の味、日常をゆるりとあらわす表現力。百合子さんが奏でるエッセイは、どれも秀逸で、あっぱれ、そしてすがすがしい。

 特集ではほかにも、「ココロもお腹も満たされるおいしい小説」や「眺めてワクワク、つくって楽しいレシピ本」なども紹介。読めば幸せで満たされる……でもますます、食欲が刺激されてしまうかも!?

取材・文=大久保寛子/ダ・ヴィンチ12月号「文庫ダ・ヴィンチ」