デジタル援交!? 父親が知らない娘の真実とは

社会

公開日:2013/11/25

 いつの間に未知の生物に化けてしまった娘を恐れる父親は多いのだろうか。スマホから驚異的なスピードで文字を打ち、SNSを使いこなす娘に埋めようのない距離を感じる場合も少なくないらしい。私もきっと両親に言わせれば、昔は可愛かったのに、気づけば訳の分からぬ化け物と化してしまった娘なのだろう。娘としては一歩ずつ親離れしているだけ。ただ、家と外でそれぞれの「私」がいるだけなのだが、親としては目の届かぬ未知の世界へと飛び出していく私達を心配に思うだろう。一体、今、娘は何を考えているのか、一体スマホで何をしているのか。全く分からないが故に知りたくなってしまうのだろう。

 『週刊プレイボーイ』(集英社)を中心に男性誌の記者として、女の子を取材して15年以上の経験を持つ黒羽幸宏氏は『父親が知らない娘の真実』(双葉社)の中で、現代の娘の危険な姿を描き出している。

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 私達娘世代は現実世界からもWEB世界からも絶対に振り落とされないように、スマホを使って必死にしがみついている。プライドが妙に高い今どきの娘たちは、孤独な姿は誰にも見せたくない。そのためにスマホは欠かせないし、SNSによって、常に「リア充」(現実世界で充実した毎日を送っている人)であると訴え続けることが必要となるのだ。黒羽氏によれば、娘世代が最も怯えるのは、“ぼっち(独りぼっち)”になることだという。若い女の子は友達のSNSを絶えずチェックし、“ぼっち”にならないように反応を返している。SNSを更新しないと落ち着かないからと、ネタを探すためだけに街に出る場合もある。さらに、仲良くもない仲間とのBBQに参加し、写真をアップすることも少なくはない。これも、自分は一人ではないということをアピールするためだと黒羽氏は語る。プライドが高いと言いながらも、実は自分自身に自信がないから、そのような行動をとるのである。

 何にも興味を持たず、消費もしない「さとり世代」などと呼ばれる現代の若者であるが、他の人に自らを良く見せるための消費は進んで行う。みんながハマっているアプリを買わないと話題に付いていけないし、LINEのスタンプは自らの個性を表す重要なアイテムであるから思わず購入してしまうらしい。それぞれ1回の購入につき100円程しか掛からないはずのものであるが、著者に言わせれば、そうであるが故に気を抜いてたくさんの消費を行ってしまい、赤貧となる娘が増えているらしい。

 おまけにこの世代は交際費にも多くのお金を取られる。「男の子とカラオケや居酒屋に行ったら消費税まで割り勘にしますね。男の子にお金を払わせる女の子って気味が悪い。人間としての姿勢みたいなものが歪んでいると思う」。男女平等世代を生きてきた私達は何事も対等であることを求められ、そう教育されてきたために、昔の娘達よりも、ある意味損することもあるのかもしれない。

 金欠となった娘達はどうやってお金を稼ぐのだろうか。著者の周りには真面目にコンビニやファミレスなど時給の安いアルバイトをする者ばかりだが、同書ではお金のために危険なアルバイトに手を出す娘達の存在に切り込んでいる。キャバクラや風俗系のお店の他、近年では、実際に会わずにスマホで卑猥な写真や動画を自分で撮って送る「デジタル援交」や客と会話を楽しみながら手や足裏のマッサージをする「JKリフレ」などに手を染めてしまう娘もいるという。当初はお金のために危険なアルバイトを始めるようだが、客達にちやほやされるうちに自分が特別な存在であるのだと愚かな錯覚に陥ってしまう。次第に思春期特有の「自意識」や「変身願望」を満たすものとして、そして、また容易に高額なお金が手に入るので、娘達は危険な仕事にハマリ込んで抜け出せなくなっているようだ。

 娘とどう向き合って良いのか分からない父親は山のようにいるのだろう。娘としては『父親が知らない娘の真実』というタイトルのこの本を父親の書棚で発見したら、父とはしばらく口を聞けなくなってしまうような気がするが、本書は娘と向き合うために、こっそりと、でもじっくり読んでほしい1冊である。娘と真剣に向き合おうとする意思を持てば、娘も必ず分かってくれるだろうと黒羽氏は述べている。確かにその通りであるだろう。娘達は化け物ではなく、孤独な自意識を抱えて揺れている存在に過ぎないのだ。娘を変えたいのならば、まずは自らが娘に誇れる背中を見せてほしい。きっと世の娘達は誇れる父親を求めてやまない。

文=アサトーミナミ