リーマン・ショックを受けてあのベストセラー「金持ち父さん」が改訂! 働く量を減らして、楽して稼げる方法がある(ってマジかよ!)

仕事術

公開日:2013/11/28

「持ち家は資産ではない」という大胆な発言で脚光を浴びた著書『金持ち父さん 貧乏父さん』がはじめてアメリカで出版されたのが1997年。同書はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストに7年に渡って名を連ね、アメリカのベストセラーの歴代トップスリーに入った。日本でも大流行したから覚えている人も多いことだろう。

 本書『改訂版 金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント 経済的自由があなたのものになる』(白根美保子:訳/筑摩書房)は、著者ロバート・キヨサキ氏が書いた「金持ち父さん」シリーズ2作目の改訂版だ。主に不動産投資を得意とする同氏が、サブプライムローン破綻やリーマン・ショックを経て、今の時代に合わせた内容に書き改めている。来年の消費税率引き上げを見越して、日本でも夢のマイホームを手に入れようとしている人で市場が盛り上がっているから、このタイミングでの出版は絶妙といえるだろう。

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 同書を手にした理由はただひとつ。裏表紙に「この本はどうしたら労働時間を減らして収入を増やし、税金を減らし、経済的に自由になれるか、その方法を教えてくれる」と魔法の呪文が書かれてあったから。

 正直、一見どころか二見したところで胡散くさい。でも、もうじき、善良な市民のなけなしの金を容赦なく引っこ抜いていく、へたすると悪徳金融業者以上に悪徳に思えてくる税務署殿へ確定申告に行かなければならない。本当に支払う税金を減らして、経済的に自由になれる方法があるというなら、それは藁をも掴みたい。

 その誰でも簡単にラクしてボロ儲けできる(らしい)金持ち父さんの解くキャッシュフロー・クワドラントとは、「どこからお金を得ているか」で人々を4つに分類する考え方が基盤になっている。まず十字を描き、左上にE(人に雇われて働く従業員)、左下にS(自分が雇い主である自営業者)、右上にB(ビジネスオーナー)、右上にI(投資家)と記してみてほしい。この図を中心に同書は展開している。

 キヨサキ氏いわく、EやSでいる以上、一生金持ちにはなれない。その主な理由が税金やらローンの利子やら浪費やらで「自分で得た収入の多くを負債にしてしまう」点。一生苦労しない金持ちになるには、図の右側、BとIを循環できるようにならないといけない。

 そして、もうひとつ、どこかから借金をする場合は、最初の段階から自分がその借金を払うのではなく、人に払ってもらうシステムを作ることが大切。不動産であるなら、マンションを買った時点で、自分が買った値段より高値ですぐに買い手をつけること。お金を「絶えず動かす」人間にならなければならない。「金持ちになるにはお金のために働いてはいけない。お金が自分のために働かなくてはならない」と繰り返し言及している。

 加えて、今回の新たに書き改められた第5章では、投資家のレベルを5つに区分けしている。「ファイナンシャル教育ゼロの人」「お金を貯めて損をする人」「その暇がないという人」「“私はプロだ”という人」「資本家レベルの人」。彼がいう金持ちは「資本家レベルの人」(ビジネスオーナーとして、投資をしている人)を指すのだが、彼らの一番の違いが他人のお金を使って投資をすることであり、やはり自分の金には手をつけない。

 もうお分かりでしょう。金持ちになるために一番重要なのは投資に関するホニャララの知識以前に、きっと「人の金で自分がラクして肥えても罪悪感を持たない無神経さ」だ。彼の理論をそのまま適用するなら、誰かの資産が増えている時は、別の誰かの負債も同額増えている。それを知りつつ、自分はふんぞり返りながらふかふかソファに座り、他人様が肉体労働やブラック企業勤めであくせく稼いだ金に利子をつけて返済を求めても心が痛まない人間になりきれるか? まずはそこだ。もうこの考え方自体が、キヨサキ氏にしたら、図の左側の人間(=貧乏人)なんだろうけど、ところで右側の人間(=金持ち)ってろくな死に方しないよね、と憎まれ口を叩かずにはいられない衝動に駆られる時点で、やっぱり自分はこの本を読んだくらいじゃ金持ちにはなれない(キッパリ)とトホホな気分にならざるを得なかったことだけは告げておく。

文=山葵夕子