学園生活はいつだってほろ苦い ―ブンガク!【第14回】―
公開日:2013/11/11
【前回までのおさらい】
○【第1回】ブンガク部が廃部ってどういうこと?
○【第2回】帰国子女でラノベ好きな美少女あらわる!
○【第3回】ブンガク部の救世主?顧問をさがせ
○【第4回】ラノベ好きな先生からの挑戦状
○【第5回】『東京レイヴンズ』作者・あざの耕平さんに聞いてみた
○【第6回】ラノベって女の子でも読めるの?
○【第7回】中二病でトラブルメーカーってなんなの?
○【第8回】教えて!大人でも楽しめるキャラクター小説
○【第9回】ラブコメはラノベの王道!?
○【第10回】スピンアウト・スピンオフってどういう意味?
○【第11回】なぜ人気?主人公が人外のライトノベル
○【第12回】6人目の部員は引きこもりですが、何か?
○【第13回】メンバー揃ったし学園祭の出し物を決めよう!
~とある文具店~
「あ、えーと、テープとハサミ、そして折り紙に飾りつけと、あとは……」
「……智樹! あと、これもじゃないか?」
「ああ、そうか……」
「じゃあ……あれも、コレも、アレも、これもだ! 」
「いくつ持っていくんだよ! ……てか、なんだよ、そのお菓子は!?」
「徹夜用の夜食にだよ、徹夜用!」
「おいおい、何で徹夜が前提なんだよ!?」
「な~んとなく……」
「なんとなくかよ!」
~ブンガク部 部室~
「おはようございます!」
「チースッ! おはようございます!」
「やあ、二人ともおはよう!」
「先輩、学園祭で使う資材を買ってきましたよ」
「お疲れ、ありがと……何だ、これ? やけに多めに持ってきたな!?」
「い~や、それほどでも~」
「いいや、褒めてないから」
「ああ、そうだ、それと部誌の入稿データは田中先生に渡しておきました。明日には印刷工場に行って印刷してくれるみたいですよ」
「あれ、そういえば他のメンバーはどこですか?」
「……確か、今川さんは部の出し物の申請に、唯ちゃんにはポスター張りに行って貰っているよ。あと直斗は……どこに行ったかな?」
「で、先輩は何をしているんですか?」
「ああ、僕はちょっとした予定表をね」
「予定表?」
「ようやく直斗も引きこもりを脱して、入部してきてくれたからね。だから、こうして部のこれからの予定を立てていたんだ。色々とやることが増えたからね」
「……あの、そういえば直斗君は何で引きこもりになんかなったんですか?」
「ああ、そうか。そういえば話してなかったね」
「何があったんですか?」
「あ、それは俺も知りたいですね」
「まあ、あまり人に話すことじゃないけど……知ってもらっておいたほうがいいかな。まあ話せば多少、長くなるんだけどそれでもいいなら……」
「別に良いっすよ」
「僕もいいですよ」
「……うん、じゃあ、当時、直斗は高校デビューしたてで浮かれていたのもあってか当時はちょっとやんちゃだったね」
「へえ、意外ですね、今の直人君からは想像もつきませんけど……」
「まあね、直斗も直斗で当時はそれなりに高校生活を上手くやっていたんだ。だけど、夏の初めあいつにとってのちょっとした事件が起きたんだよ……」
「……事件? 何か学校で問題でも起こしたんですか? もしかして停学とか!?」
「いいや、そんな騒ぎになるほどのことではないんだ。それは直斗自身の問題であるというか……なんと言うか、原因は他にあるという感じかな」
「原因!?」
「実はあいつね、当時、好きな子がいたんだ」
「マジで!?」
「ああ、そして直斗はその子に告白した」
「で、どうしたんですか?」
「残念だけど直斗は即フラれたらしい……“身長が低くて前髪が隠れているような人は嫌だ”と言われたらしいんだ。それ以来“やっぱり僕の青春ラブコメはまちがっているよ(※1)”とか呟きながら直斗は引きこもりになってしまったんだ」
「やっぱり僕の青春ラブコメはまちがっているよ」(※1)
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(渡 航/小学館)
青春は嘘で欺瞞だ。リア充爆発しろ! ひねくれ者で友達も彼女もいない高校生・八幡が生活指導の先生に連れてこられたのは学園一の美少女、雪乃が所属する生徒の問題を解決する手助けをする部「奉仕部」だった。それから八幡は自分とは正反対のスクールカーストに属する由比ヶ浜結衣、中二病全開の材木座義輝、テニス部員で可愛い女子にしか見えない戸塚彩加達と共に依頼を解決していく、青春は残酷だ!?ひねくれ男の妄言ラブコメ。2013年4月にテレビアニメ化された。
「ええ、なんじゃそりゃ!!」
「直斗君、けっこう苦労したんすね」
「うん、今となっては直斗にとってこれは封印しておきたい黒歴史みたいなものだからね。あんまし触れないでやろうと思うんだ……」
「……あ、先輩、先輩!」
「ん?」
「……兄さん」
「あ、直斗!?」
「……兄さんの、兄さんの……馬鹿野郎!!」
「え、えええぇぇぇ……!!!」
「兄さんなんか、ある日、爆弾がおちてきて、その子と一緒に吹っ飛んじまえぇ!(※2)うわわああぁぁん!」
「ある日、爆弾がおちてきて、その子と一緒に吹っ飛んじまえぇ!」(※2)
『ある日、爆弾がおちてきて』(古橋秀之/アスキー・メディアワークス)
『人間じゃなくて“爆弾”? はい、そうです。最新型ですよ』と、ある日、空から落ちてきた50ギガトンの爆弾。だが、なぜか、それは昔に好きだった女の子に似ていた。そして胸にはタイマーがカチカチと音を立て時を刻んでいた。表題作に「都心に投下された新型爆弾とのデート」を含めた、七つの温かくておかしくて、ちょっとフシギなお話で贈るボーイ・ミーツ・ガールな物語。2013年にテレビドラマ『世にも奇妙な物語 2013年 秋の特別編』で実写ドラマ化された。
「な、なに!? 待て、直斗! カムバック! カムバック……」
「ただいま戻りました。……あの、さっき直斗君が部室を飛び出していきましたけど何かあったんですか?」
「ああ、実はね……」
「……た、たたた、大変だーッ!!」
「て、今度は何だよ!?」
「あ、田中先生……」
「ど、どうしたんですか?」
「い、いや、それがね、実はさ、それがあれでね……」
「はあ? とりあえず落ち着いて喋ってください!」
「あ、ごめん、ごめん、実は……その、部誌の入稿データをね……」
「部誌の入稿データがどうしたんですか?」
「……部誌の入稿データをね、紛失してしまったんだー!」
「……な、なんじゃーそりゃーッ!?」
「……あはは、やっぱり徹夜っスかね、コレ?」
「……あはは、だね」
……つづく
次回予告
「こんにちは佐藤唯です!」
「同じくこんにちは今川凜子!」
「なんかブンガク部が大変なことになってきましたね」
「そういえば何があったの唯ちゃん?」
「私もよく分からないんですけど優斗先輩が直斗君の暴露話をしたらしいんですけど……」
「それは大変、直斗君がまた引きこもりになってしまうかも……」
「え、それは困ります! では……」
「次回の『ブンガク!』もお楽しみに!」