『ごちそうさん』の杏も困惑! だし、肉、カール…、東と西の味は今もこんなに違う!?

食・料理

公開日:2013/12/3

 『あまちゃん』に続き、NHKの朝ドラ『ごちそうさん』が好調だ。とくに、杏が演じる主人公・め以子が東京の実家を離れ大阪に嫁いでからは、夫の実姉による嫁イビリが「ひどすぎる!」と話題を呼んでいる。

 しかし、この“大阪編”の見どころは、もうひとつある。それは東京と大阪の食文化の違いだ。おにぎりの握り方一つをとっても、東京では定番の三角握りが大阪では弔事用の握り方だったりと、め以子が未知の食世界・大阪で右往左往する姿は現代人である視聴者にとっても「へー!」の連続。俵型握りが主流の大阪でも今ではコンビニの普及で三角握りは日常的なものなので、弔事用の握り方だったと知って驚いた関西人も多いのではないだろうか。そこで今回は、東京と大阪の食文化の違いを、『「関東の味」のしきたり 「関西の味」のしきたり』(話題の達人倶楽部/青春出版社)から紹介しよう。

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 まず、『ごちそうさん』で、め以子の前に最初に立ちはだかった問題が「だしの違い」。東京がかつおだし文化であるのに対し、大阪は昆布だし文化だからだ。では、なぜ東と西でだしが違うのだろう?

 よく言われるのは、「江戸では土佐のかつお節が好んで使われていたため、関東はかつおだしが浸透」「関西では、北海道でとれた昆布が北前船で運ばれてきたため、昆布だし文化が根付いた」という説。だが、実は「それぞれの地の水質が大きく関係している」という説もあるのだ。というのも、関東地方は火山灰を含んだ地質であるため、地下水はミネラル分を多く含んだ硬水。昆布に含まれるグルタミン酸は硬水では溶けにくいが、関西の地下水は全般的に軟水。すなわち、昆布のうまみが溶けやすい水質なのだそうだ。

 また、関東と関西で大きく異なるものといえば、肉。たとえば肉じゃがも、関東では豚肉を使う家庭が多いが、関西では牛肉が当たり前。関西人に言わせれば“肉といえば牛肉”なので、肉まんのことも「豚まん」とわざわざ区別して呼ぶほどだ。実際、カレーライスに牛肉の薄切り肉を使う京阪神の家庭は東京圏の家庭の約3倍、豚肉のコマ切れを使う家庭は、東京圏が京阪神の約2.3倍という調査結果もある。この好みの違いには、西日本では「かつて家畜として牛が飼育されてきた」ということと、東日本では「サツマイモや麦の栽培がされていたことから、これらを飼料とする豚の飼育が盛んに行われていた」という事情があるようだ。

 こうした地域の特性や歴史から生まれた東と西の食文化の違いは、全国に流通する商品でも考慮されている。「日清のどん兵衛」や「マルちゃんの赤いきつね」などのカップうどんが地域によって味が違うのはよく知られているが、なんとスナック菓子の「カール」の「うすあじ」も、関西の味覚を意識した商品。これにはいきさつがあり、関東で好評を博した「チーズあじ」の濃厚さが関西では受け入れられなかったことから、関西限定で「うすあじ」を発売したのだとか。いまでは「うすあじ」は全国で発売されているが、関西では大人気商品となった「うすあじ」も、関東では「今ひとつ苦戦中」。やはり「チーズあじ」が断然人気があるそうだ。

 全国チェーンの増加や流通の進化が進んだ現代でも、脈々と受け継がれている味の文化。今後も、『ごちそうさん』でどんな東と西の違いが描かれるか、楽しみにしたいところだ。