カツラはOKで植毛はNG! 愛人手当は経費で落とせる? 意外な経費トリビア

マネー

公開日:2013/12/4

 坂東英二の釈明会見は傑作だった。昨年12月、約7500万円もの税金申告漏れを指摘され、芸能活動を休止していた坂東だったが、先日突然釈明会見を開いた。だが、釈明とはほど遠いお粗末な内容に、取材陣から失笑さえもれたのだ。

 世間が最も仰天したのは“植毛”発言だ。

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「申告漏れは国税局との見解の相違。7500万円のうち、大半を植毛に使った。カツラが経費として落ちると聞いていたので、植毛も経費で落ちると思っていた。植毛が美容整形と同じだと初めて知りました」

 実際に税の専門家からも「カツラと植毛では経費の扱いが違う。カツラは仕事で使い、私用では外せるが、植毛は外せないので、社会通念上でも経費とは認められない」という説明がなされている。

 しかしその境目は素人にとって非常にわかりにくい。一体経費で何が落とせるのか、そして何がNGなのか。元国税調査官である大村大次郎 の『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中央公論新社)によると、意外にも「一定の手順を踏めば、ほとんどの領収書は経費で落ち」るのだという。その必殺テクニックとは──。

 まず基本として「事業に関連している領収書ならば、どんな領収書でも経費に計上できる」らしい。その実例としてちょっと刺激的な「キャバ嬢への愛人手当てを経費で落とす方法」を紹介しよう。

 まず最初はキャバクラ代。一定の条件を満たせば経費で可能だ。そのためには最低でも3つのルートがある。

(1)接待の場としてキャバクラを利用する。
(2)商品開発やマーケティング調査のためにキャバクラを利用する。
(3)研修という名目で社員のスキルアップ、ビジネス知識のために利用する。

 キャバクラは交際費に当たるため、人を連れて行けば立派な接待費用にも該当するのだ。2次会でもOK。「その接待が会社にとってなんらかの意義がある」と判断され経費で可能だという。

 そしてめでたくキャバ嬢を愛人にすることに成功したとする。愛人手当ても経費で落としたい。そんな時、テクニック次第で経費で落とせる方法が存在するらしい。

 ここにも3つほどのルートが示される。まずはキャバ嬢を社員にしてしまう方法だ。社員に給与を払うのは当たり前であり、立派な支出だ。しかし幽霊社員では税務署のチェックも入るので、秘書として雇い、身の回りの世話をしてもらうという方便を使う。また、また非常勤役員なら週1程度の出勤でも突っ込まれない。さらに愛人と別れるときは、「手切れ金」ならぬ「退職金」を支払う……。

 また妻や社員の目が怖い場合は業務委託という手も存在するという。パソコンでの書類作成、若者へのリサーチ、マーケティング依頼など名目はいくらでもある。その対価として支払えばそれは業務上の支出となる。

 もうひとつが情報提供料。ライバル会社の動向など、具体的な名目を考え、その対価を支払うという方法だ。にわかには信じ難いが、元国税調査官である著者が言うのだから荒唐無稽な話でもないのだろう。

 要は、いかに業務に関係するか頭を捻り、手を買え品を変え工夫するか、である。アイデアしだいで、経費は落とし放題ということなのだ。

 愛人だけでなく自宅用のテレビも「自宅で事業関連のDVDを観るため」といえば、税務署も追及を止めるらしい。家賃、洋服、コンサートチケットだって「福利厚生費」の対象になる。コンビニ弁当も“夜食”と命名すれば福利厚生費として簡単に落とせる。特に個人事業者は接待交際費の上限がないため、使い放題。やり方次第では生活の全てを経費で落とせるという。

 しかし、そこには落とし穴も。ニセの領収書や数字の書き換えはもちろんNGである。そして問題は「社会通念上」という言葉だ。これは「自分に都合のいい理屈でも、それは常識的範囲で」ということらしい。そしてこの“常識”は時代や社会情勢と共に変化していくことにも注意が必要だ。

 たとえばクルーザーを福利厚生費で購入するといえば、以前は「そんな贅沢品を経費で計上できない」という“常識”が存在した。しかし最近ではクルーザーを経費で購入する企業は多く「別におかしくない。当たり前」という認識へと変化しているらしい。

 こうした会計のキモを知り、頭を使って創意工夫し、さらに「社会通念」さえわきまえれば「全ての領収書は経費で落とせる」のだ。

 そう考えると、坂東英二の“植毛”はお得意の口八丁を駆使しても「社会通念上」NGだったのか。でも、もしかしたら数年後には“植毛”もOKになったりして。経費とはこのように曖昧なもののようだ。