2013年大活躍の今日マチ子 その“毒”に魅了される

マンガ

公開日:2013/12/6

 『センネン画報』で一躍世に知られ、コンスタントに作品を発表し続ける今日マチ子。今年一年を振り返ってみても、作者の活躍はさらに際立つものだった。戦争ものとして2作目となる『アノネ、』、クローン人間を題材にしたSFの『U』、東日本大震災を彷彿させるファンタジー『みつあみの神様』……etc。ともすれば、遠い世界のお伽話になってしまう戦争ものやSF作品も、現実の少女の生々しさが宿っていた。

 12月20日に7巻(完結)が発売される『みかこさん』は、ごく平凡な女子高生の恋や進路の悩みを描く物語だが、そうしたお話ですら、少女の姿は「等身大」というより「生々しい」。それは、少女の身勝手さ、したたかさ、隠微さといった毒々しい部分が行間に潜んでいたからではないだろうか。

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 そうした毒は、リアルな女性の実態をギャグ&ルポ調で描き続ける辛酸なめ子と通じるところがある。今日自身も影響を受けた一人として辛酸の名前を挙げているが、二人は偶然にも同じ女子校の出身、しかも美大出身であるというから、そもそもの原風景や環境により培われた人間観察の鋭さが共通しているのだろう。毒そのものを主題にする辛酸と、毒をエッセンスとして使う今日とでは、作風こそは違うが、本質は似ているのだ。

 ラフな線画と淡いコピックで鮮やかに着彩された今日作品には、そうした毒が密かに盛られている。2013年、その毒にやられてしまった読者はさらに多かったはずだ。来年も楽しみな作家の一人である。

文=倉持佳代子/ダ・ヴィンチ1月号「出版ニュースクリップ」