初音ミク、リラックマ……キャラクターとの付き合い方は「アトム」「オバQ」から学んだ!?

マンガ

公開日:2013/12/27

 やなせたかしさんが亡くなられた。アンパンマンはスーパーマンが発想のもとなのだが、アンパンマンそのものとしてこの先も生き続け、子どもたちに愛されていくだろう。サザエさんやドラえもんがそうであるように、優れたマンガのキャラクターはいつしか作者の手を離れ、みんなの共有財産として世の中に定着していく。

 『ダ・ヴィンチ』1月号では、ライター・北尾トロがキャラクターマンガに着目。時代のアイコンともなりうるその影響力に着目し、京都精華大学マンガ学部で教員を務めるマンガ研究家の中野晴行さんに「マンガキャラクターの歴史」について講義を受けている。

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 アニメーションとキャラクターの結びつきを決定づけたのは『鉄腕アトム』。この作品を皮切りに、スポンサー主導ではないキャラクタービジネスの潮流が生まれる。それには、やむにやまれぬ事情があった。

「アニメーションはお金がかかりますから、制作費が足りなかった。そこで、キャラクタービジネスを生み出し、コンテンツを海外に売るにはどうしたらいいか、手塚さんたちは、そこまで考えて自分たちのキャラクターを造形したのです」

 いまでは悪の主人公もいるが、昔は万人に愛される主人公が絶対条件だった。子どもの心をつかむためには、それに加えて身近で描きやすいことも重要。アトムの絵柄もいろんな原案があったが、最終的には描きやすいものに決定したのだそうだ。

「これをさらに徹底させたのが『オバケのQ太郎』です。アトムにはロボットの冷たさがありましたが、オバQはマヌケで大飯食らいで、住んでいる家も普通。なのに空を飛んだり消えたりできる。つまり、子どもができないことを代わりにしてくれる、夢を叶える存在なんです。『ドラえもん』も同じ流れです」

 アトム以降の人気キャラは、雑誌に描き方が載っていた。言い方を換えると、子どもがカンタンに描けるかどうかが、キャラクターにとって大事だったことになる。いや、いまも同じだ。スタジオジブリの絵は描きやすく、独特のタッチを見ると、すぐにジブリ作品だとわかるではないか。この傾向は万国共通。日本が舞台の『ドラえもん』は、生活様式の違うヨーロッパでは受けないと思われていたがそうじゃなかった。畳も布団も、マンガというファンタジーの世界での約束事だから違和感がないのだ。

 キャラクター文化を支えてきたのは現在60代後半の元祖マンガ世代と言ってもいい人たち。それが子どもに伝わり、サブキャラまで注目されるように成熟していった。

「商品キャラクターがヒットする理由は、かわいいだけじゃなく、ストーリー性があるからです。『リラックマ』や『初音ミク』は、あえて不完全なキャラクターとして登場させ、ファンと一緒に物語を作り上げていくスタイル。そこには、マンガという豊かな土壌で鍛えられた感性が大きな影響を与えていると私は思います」

 我々が『初音ミク』を抵抗なく受け入れることができるのは、キャラクターとのつきあい方、距離感を子ども時代から学んできたからなのだ。そして、その源流にはマンガがある!

 同誌ではマンガ発のキャラクタービジネスの現状に迫り、同連載のキャラクターグッズの制作を開始。その様子をルポ形式で掲載している。

文=北尾トロ/ダ・ヴィンチ1月号「走れ!トロイカ学習帖」