『軍師官兵衛』だけじゃない! 世界の“序列2位ヒーロー”伝説

テレビ

公開日:2014/1/4

 1月5日からスタートする、岡田准一主演のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』。2007年『風林火山』以来の本格戦国大河とあり、男臭いドラマに期待する人もいるかと思うが、一方で「……官兵衛って誰?」という人も多いはず。簡単に説明すると、主人公である黒田官兵衛というのは豊臣秀吉の側近だった武将で、「乱世を終わらせるために突如現れた稀代の天才軍師」(HPより)。いわば、秀吉の天下統一を支えた右腕といえる人物なのだ。

 しかし、官兵衛に限らず、世界の歴史には君主を君主たらしめた“ナンバー2”が数多く存在するもの。そこで今回は『軍師官兵衛』がもっと楽しくなる世界の“序列2位ヒーロー”を、『世界ナンバー2列伝 史上最強・補佐役・宰相・顧問・右腕・番頭・黒幕・参謀』(山田昌弘/社会評論社)から紹介しよう。

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 まず、右腕に必要なのは“忠誠心の強さ”だが、その意味ではソ連の最高指導者だったスターリンの右腕であるモロトフは外せない。2人はともにアパートで同居したこともある関係で、スターリンが共産党内で権力闘争を始めてからは、モロトフは「忠実な右腕」に。「スターリンが決め、モロトフが実行するという協働関係」となり、スターリン体制が盤石化した後は人民委員会議議長(首相)となったり、外交問題が課題となれば外務人民委員(外相)となるなど、モロトフのキャリアの変遷は「そのままソ連国家の抱える課題の優先順位を示している」と評された。

 互いをあだ名で呼び合う仲だったといわれる2人だったが、しかしスターリンは晩年、モロトフを「粛正対象」と見なすようになってしまう。しかも、モロトフの妻はユダヤ人弾圧の一環で逮捕追放され、命を脅かされたモロトフはあまりのストレスでヒステリーを発症し口を開けられなくなったほど。実際、モロトフは「あと1年スターリンの死が遅ければ殺されていた」と回想している。にもかかわらず、モロトフのスターリンへの忠誠心は最後まで絶対的で、スターリンをけなした者には「あなたはどれほどの重荷を背負っていたか分かっていない」と夫婦でなじったという。

 殺されかけても失わない忠義の心──その一方で、裏切りを働く右腕もいる。古代ローマの英雄カエサルの親友と呼ばれた武将ラビエヌスだ。護民官だったラビエヌスは、カエサルとともに「腐敗した上流階級の牙城」であった元老院の横暴を攻撃したり、ガリア征服においては、あるときはカエサルの代理を務め、あるときは進撃するカエサルの後方を守るなど、その関係はまさしく強い絆で結ばれている……はずだった。

 そもそも、ラビエヌスには政敵と接触しているという噂が流れていたが、「全く信じなかった」というカエサル。だが、「賽は投げられた」と叫んでルビコン川を越えるカエサルの後に、ただひとりラビエヌスは続かず、敵陣営に寝返ったのだ。なぜラビエヌスが離脱したのかは「はっきりしたことは分からない」というが、決別後のラビエヌスは「カエサルへのきつい敵意の言葉を吐き続けながら、精彩を欠く戦いを続け」たという。

 黒田官兵衛は、秀吉だけでなく信長と家康という三英傑から重用されながらも、その才能ゆえ警戒された。このように、ナンバー2にはナンバー2らしいエピソードが満載。ぜひ『黒田官兵衛』を鑑賞する際には、本書でそんな世界のドラマも味わってみてほしい。