一生遊んで暮らすか、働き続けるか? より良い選択をするための発想法

暮らし

公開日:2014/1/8

「今日打ち合わせがある○○駅まで、どうやって行こう?」「昼ごはんは外食にしようか?」。人は毎日、さまざまな選択をしている。その中には、人生を180度変えてしまうような選択も、きっとあるに違いない。

 「あのとき違う会社に入っていたら……」「あのとき結婚していたら……」。重大な選択をしてから数年後、そんな風に過去を振り返ったことのある人は、多いのではないだろうか。自分の選択は、果たして正しかったのだろうか――。

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 人が選択をする理由には、いろいろな考え方が影響するものだ。何気ない友人の一言だったり、親のしつけだったり、テレビで得た情報、はたまた雑誌のキャッチコピーというケースもあるらしい。しかし、最終的に決めるのは自分だ。あとから後悔して、誰かのせいにはできない。

 「自分で自信を持って選択できない」という人には、『一生に一度は考えたい33の選択』(富増章成/WAVE出版)をぜひ一読していただきたい。例題を読み進めながら、哲学的思考を学ぶことができる1冊だ。自分の中に築き上げた「思い込み」を取り払い、物事を多面的に捉えられる思考法が身に付く。例えば、こんな問題がある。

 ある日、あなたの枕元に神様があらわれてこう言った。
「一生遊んで暮らせる金がもらえるのと、一生働いて収入を得るのとどっちがいいか選びなさい」
一生遊んで暮らせる金を選んだら、働いてはいけない。
一生働いて収入を得る場合は、働き続けなくてはならない。
さてどうする?

A 一生遊んで暮らせる金をもらう
B 一生働いて金をもらう

 一見、楽そうに見えるのはA。だが、一生遊んで暮らすことには何の自己実現性もなく、その道のりは意外と苦しいものではないだろうか。労働とは、自分の作品や仕事のうちに、自分自身の行為を確認することで、自分の内側を外から眺めるという行為。人は労働を通じて自分を鍛え、技能を上達させることもできる。この考え方だと、働くことは人間にとって本質的な在り方ということになる。

 こうした例題ばかりではなく、同書には哲学者の思考法に基づいたチェックシートもある。そのひとつが、19世紀の哲学者・ジェレミー・ベンサムによる快楽計算。功利主義と呼ばれる彼の哲学は「快楽や幸福をもたらす行為が善である」という考え方に基づいており、快楽に対して7つの基準を作った。

(1)強度  その快がどれほど強いか
(2)持続性 その快がどれほど持続するか
(3)確実性 その快がどれほどの確実さをもって生じるか
(4)近接性 その快がどれほど速やかに得られるものか
(5)多産性 その快が他の快をどれほど生む可能性があるか
(6)純粋性 その快が苦痛の混入からどれほど免れているか
(7)範囲  その快がどれほど多くの人に行き渡るか

 これは日常生活でも応用できるもの。例えば、目の前にあるケーキを食べるか否かの選択をするとき。(1)、(3)、(4)はクリアしているが(2)の持続性や(5)の多産性はどうだろうか? (6)の純粋性を考えると肥満のリスクも否めない。普段何気なくしているささいな選択でも、この基準にあてはめると多角的な見方ができ、もしかするといつもの選択とは異なる答えを選ぶようになるかもしれない。

 「人間は自由にすべてを選択できるのだから、すべての責任は自分にある」。フランスの哲学者サルトルの考え方だ。次に待っている未来はひとつしか体験できないから、何が正しい選択なのかはわからないだろう。しかし、いつもの選択が変われば、人生も大きく変わるはず。よりよい選択をするために、今の自分をリセットして、視野を広げてみてはいかがだろうか。

文=廣野順子(Office Ti+)