栄養ドリンクは甘~いコーヒーと一緒? アミノ酸サプリには人毛使用? 本当は危ないサプリメントの真実

健康

公開日:2014/1/10

 正月ボケに新年会が続くこの季節、早くもドリンク剤のお世話になっている方も多いのではないだろうか。気合いを入れるための栄養ドリンク、あるいはお疲れ気味の肝臓にウコン…ところがどっこい、これらのドリンク剤は期待したほど効果がなく、かえって健康を害する可能性も含むとしたらどうだろう。現役の医療機関専用サプリメントメーカーの代表が、サプリ業界の内実をぶったぎる本『サプリメントの正体』(田村忠司/東洋経済新報社)は、本来健康に気を使って服用しているはずのサプリやドリンク剤の実態に警鐘を鳴らす。

 たとえばお馴染みの栄養ドリンクの場合、ついビタミンやミネラルなどの成分が効いていると思いがちだが、実際には「糖分」によって血糖値が急上昇し、元気になったと感じるのが主なカラクリ。しゃっきりさせるために50ml程度のカフェインを含有するものも多いが、実はその量はインスタントコーヒー1杯あたりのカフェイン量(60ml)と大差なし。つまり機能上は「砂糖をたっぷりいれた甘いコーヒー」と変わらないというわけ。むしろ愕然とするのはその糖分量で、物によっては3gのスティックシュガーなら7本分にもなるとか(!)。多すぎる糖分は、保存料などの添加物とあわせて健康被害につながりかねず、かなりデンジャラスといえるだろう。

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 なお血圧の安定や心臓や肝臓にも効果があるタウリンも注目成分。よく“1000mg配合”などと謳われるが、「1000mgは1gなので、イカやタコ、ホタテの刺身を食べれば十分」と著者。たとえばヤリイカなら可食部100gあたり700mg程度のタウリンを含むといわれているから、150gも食べればOKということになる。とはいえ、これらをすぐに食べるのは難しい場合も多いだろう。どうしてもドリンク剤に頼らざるを得ないという人には、薬局で同じ製品の「錠剤」を手に入れるのがおすすめ。こちらのほうが糖分・添加物が少なくぐっと安心度が高まるとのことだ。そのほか、ダイエットサプリや美肌系サプリの疑わしい効き目などなど、気になる話題が盛りだくさんだ。

 それにしても業界内部の人間である著者の説得力は絶大で、畳み掛けるように明かされる業界実態を知れば知るほどクールダウンし、かなりヤバい状況だとわかってくる。

 たとえばサプリは販売元となるメーカーが指定する予算通りに委託先の工場が設計・製造することも多く、メーカー側に知識が乏しく品質チェックが甘いこともよくあるらしい(ちなみにサプリ工場の人のコメントが「何が入っているか知っているのに、飲むわけない」というから、実態は推して知るべし)。また安い製品の原料にはギョッとするものもあるようで、たとえばアミノ酸系のサプリに中国人の人毛が使われているなんてことも(!)。考えてみればサプリとは、謳い文句は私たちの欲望にストライクの甘い誘惑に満ちていて、まるで夢をかなえる「魔法の薬」のようだ。冷静に考えればそんな都合のいいものが簡単にあるのもおかしな話で、現実は微妙な効果と引き換えに添加物と糖分の固まりを安易に口にしている状態といえるのかも。

 とはいえ、もちろんすべてのサプリが「悪」というわけではない。幸い本書はプロの視点で、サプリメントの上手な選び方(値段はそれなりのものを選ぶ、内容成分をチェック、他)や症状別、サプリ別の効果的な服用方法もきちんと教えてくれるのでご安心を。しかしながら著者も何度も繰り返すが、基本は「栄養は食事から」が鉄則なわけで、サプリ愛用者はこの本でコワ~い思いを噛み締めて、新年から生活を見直してみるのも得策だろう。それこそあなたの人生を救うかもしれないのだ。

文=荒井理恵