突然、収入が断たれたら……? 誰でも申請できる生活保護の基礎知識

生活

公開日:2014/1/14

 みなさんは、生活保護についてどんなイメージを持っているだろうか。生活保護の不正受給ばかりにスポットライトが当たり、「生活保護を受ける=ダメなこと、恥ずかしいこと」といった印象ばかりが根付いてしまっているのではないだろうか。しかし、平凡な暮らしをしている人の前にも、突然落とし穴はやってくる。そこで、もし病気やけがで収入が断たれてしまったとき、どうすればいいのか。12月16日に発売された『マンガでわかる生活保護 陽のあたる家 ~生活保護に支えられて~』(さいきまこ/秋田書店)から、紹介してみよう。

 この本で登場する沢田家は、会社員の夫とパートで働く妻、中学生の長女・美羽と弟の大輝の4人家族。決して裕福ではないけど、それでも家族みんなで幸せに暮らしていた。しかし、夫が病気で倒れ、長期入院することになってから生活は激変していく。妻がそれまで以上にパートを入れ、朝から晩まで働いても、医療保険の給付金を受け取っても、医療費と4人分の生活費をまかなうことはできず、貯金も底をついてしまう。家のことまでは到底手が回らず、長引く入院で夫はクビに。子どもたちの部費や電気代も払えず、ついに妻までもが倒れてしまうのだ。知人のすすめでようやく生活保護を受ける決心をした沢田家だったが、知らないと困ることもたくさんあるのだ。

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 たとえば、生活保護は誰でも申請できるわけじゃないと思っている人もいるかもしれないが、実は金持ちだろうと「申請権」があるので、申請はできる。しかし、国が生活保護にかける予算を削ると決めたことで、なかには申請する人を減らすために「いろいろ言って追い返す」自治体や窓口の人もいるそう。作中に出てくる窓口の人はその典型で、「あなたが頑張って働くしかない」とか「金があるのに申請なんかするから不正受給でバッシングされるんだ」とネチネチ嫌味を言ってくる。でも、それに屈する必要はない。なぜなら、実際に申請した場合、資産もすべて調べられるので、もし本当にお金があるのに生活保護をもらっている人がいるなら、それは福祉事務所の責任でもあるから。それに、不正受給ばかりがニュースで取りざたされているが、生活保護受給者の「99.6%はまっとうな受給」なのだ。

 また、少しでも収入がある人は保護を受けられないと思っている人もいるはず。しかし、それもまったくの誤解なのだ。生活保護は、収入が「最低生活費」を下回っていたら「最低生活費に足りない分が支給される仕組み」になっている。この最低生活費は国が決めているもので、「どの地域に住んでどんな家族構成なら最低いくら必要」かということを割り出したもの。だから、支給される保護費は働いた収入と合わせるとその額になっているそう。

 そして、もっとも気をつけなければならないのが申告漏れ。たとえば、両親が生活を切り詰めて「少ないけれど生活の足しにしてください」と送ってくれたお金も、「収入」と見なされるのだ。これを福祉事務所に申告し忘れると、不正受給にカウントされてしまう。世間で騒がれている不正受給の実態も、大半は「臨時の仕送りを申告し忘れた」り、「子どもが内緒でアルバイトしてるのを知らずに申告できなかった」というパターンなのだそう。

 みなさんも、生活保護に対する正しい知識を得ておくことで、今後助かる場面が出てくるかもしれない。誰しもが、いつ働けなくなるかなんてわからないのだから。

文=小里樹