同性婚ができないことのデメリットとは? マンガでは見えない“同性愛のリアル”

恋愛・結婚

更新日:2014/1/28

 1月14日、ナイジェリアで同性婚を禁ずる法律が成立し、世界で非難の声が上がっている。同性同士で結婚した、あるいは結婚と同様の関係を結んだ人たちに対して最高14年の禁錮刑を科すなどとし、他国で認められた同性婚なども無効とみなされるというのが、その内容だ 。

同性婚は、2001年にオランダで世界初の合法化。以後、ベルギー、ポルトガルなどが追随し、2013年にはウルグアイ、ニュージーランド、フランスなどで法律が施行。2014年にも、イギリスの一部で同性結婚法が施行予定だ。 フランスでは、5月の合法化から年末までに同性婚の制度を利用したカップルは、約7000組。1年間で結婚したカップルの3%を占めるという。

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 ご存じのとおり、日本では同性婚は認められていない。しかし、なぜ彼らが“結婚”という方法をとりたがるのか? そのヒントが、牧村朝子『百合のリアル(星海社新書)』(講談社)にある。著者の牧村氏は、フランス人女性とフランスで同性婚をした26歳の女性だ。

 セクシャルマイノリティ同士が結婚できないデメリットは、家族として公に認められないゆえに生じるデメリットである。もちろん、暮らしを一緒にして事実婚状態にあったとしても、だ。

●医療の現場で他人扱いされる
ある人が救急治療室に入ると、家族以外は基本的に面会謝絶となり、親族の許可がないと会うことができない。本人の意識がない場合、どんな治療をするかの決定で優先されるのは、法律上の家族。

●住宅事情の上で不利益を得る
「結婚していない他人同士の同居」は、年齢を重ねるごとに難しくなりがち。また、結婚していないカップルのどちらかが賃貸物件の名義人になっている場合、その人が亡くなった際に残された方は退去を命じられることが多い。

●子育てをしたい場合、双方には親権が認められない
独身者として里親になる、精子バンクや卵子バンクを利用するなどの方法で、出産・子育てをすることはできるが、結婚している男女でない限り、双方が親権を得ることはできない。

 そのほか、配偶者控除がなかったり、遺産相続が基本的にできなかったり、外国籍の恋人に在留資格が下りない場合に引き離される可能性があったり…といったデメリットも。異性愛者にとって「ただの紙一枚」とも言い切れてしまう結婚が、いかにメリットに満ちた制度かがわかるだろう。

 著者は、ほかにもセクシャルマイノリティのカミングアウト、出会い、セックスなどについて、自身の体験を交えながら紹介している。彼女がセクシャルマイノリティという自己を受け入れるまでの逡巡は想像以上に大きく、セキララかつまっとうなセックス事情には驚きすら感じるかもしれない。

 とはいえ、それよりも多くの人が発見するのは、自身がいかに世界をカテゴライズし、自身をカテゴライズして生きているかという事実なのではないだろうか。先述した同性婚のくだりで、著者はこんなふうに言っている。「“同性結婚制度が存在しない日本で、同性と生きていきたい人に何ができるか?”を考えることは、広い目で見れば“人生設計の前に法制度が立ちはだかった時、個人に何ができるか?”を感がることでもある」――と。

 私たちには、生まれてすぐに3つのものを与えられる。国籍と性別と名前だ。しかし、それらがいかに世界を切り分けているかについては、ほとんど知らない。当たり前を疑うこと。それは、自分を、そして他人を理解するための第一歩でもあるのだ。

文=有馬ゆえ