とあるレズビアンカップルの、ディズニーランド結婚式秘話

恋愛・結婚

更新日:2014/1/28

 東京ディズニーランドのシンデレラ城で結婚式を挙げられることはみなさんご存知かもしれない。昨年の3月、あるカップルがそこで式を挙げて話題になった。それが、増原裕子と元タカラジェンヌ東小雪のレズビアンカップルだ。しかし、彼女たちがここで式を挙げるまでにはさまざまな苦労があったという。そんな結婚までの軌跡を描いた『レズビアン的結婚生活』(東小雪+増原裕子:著、すぎやまえみこ:マンガ/イースト・プレス)が1月17日に発売された。レズビアンカップルが結婚式を挙げるには、どんな壁が立ちはだかっていたのだろう?

 まず、最初にあがったのが式場の問題。シンデレラ城で結婚式が挙げられることを知った2人は、すぐさまディズニーランドに問い合わせた。その際、はじめは式を挙げることはできるが「一般のお客様への影響を考えますと」「どちらかが異性に見える服装でお願いいたします」と言われたそう。あからさまに否定していたわけではないが、「悪影響」というニュアンスが感じられたという。それでも諦めずに説得を続け、アメリカのディズニー本社にも確認してもらった結果、史上初となる東京ディズニーランドでの同性婚が実現できたのだ。式が決まってからは、実際にウェディングドレスを着た女性スタッフがバージンロードを並んで歩けるかやキスのときにお互いのベールを上げられるか、ゴンドラに並んで座れるかなど、細かいところまで気を配ってシミュレートしてくれたよう。式場とスタッフの理解と協力を得ることができたことで、第一段階はクリアできたのだ。

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 次に立ちはだかったのは、費用の問題。女性の場合、衣装やネイル、エステなど、さまざまな費用がかかるが、普通の結婚式なら新郎側が7、新婦側は3の割合で負担すると言われている。でも、どちらも女性なので負担は肩代わりできないうえ、新婦にかかる費用が単純に2倍になるので、異性婚よりもお金がかかる。普通なら両親に借りることもできるが、同性婚の場合は両親に協力してもらうのも大変なのだ。小雪と裕子の場合は、裕子の両親が理解を示して協力してくれたので金銭面のバックアップをお願いすることができたが、みんながそうなれるとは限らない。実際、小雪は両親に頼れないので、その点でも負い目を感じていたよう。

 そういった点もひっくるめて、もっとも大変だったのがメンタル面の壁。マリッジブルーという言葉があるように、女性の場合、結婚式前にはブルーになることが多い。ただでさえ女性は不安定になるのに、どちらも女性で、しかも同性婚となればますます不安になるのも仕方がない。もともと小雪が不安定な人だったので、結婚前には些細なことでケンカして家出したり、心配して探しにきた裕子をストーカー扱いして警察に突き出したりもしたそう。普段は冷静でいられる裕子も、このときばかりは「結婚式してずっと一緒にいられるか自信なくす…」と泣き言を漏らしたという。でも、レズビアンカップルやゲイカップルの友人に連絡したり、レズビアンで結婚した先輩に相談し、励まされ、支えられて2人で乗り越えた。

 夫婦なら、紙切れ1枚とはいえ、みんなに証明できるものがある。しかし、同性婚はどんなにお互いを思っていても周りに証明できるものなんてないし、結婚式をしても結局は自分たちの思い次第。でも、だからこそ彼女たちが東京ディズニーランドで大勢の人に祝福されて結婚式を挙げることができたことには意味がある。この本は、マイノリティだからといって何かを諦める必要はないということを教えてくれる。きっと、多くの人が勇気と希望をもらったはずだ。

文=小里樹