初回視聴率18%の好発進! 向井理主演ドラマ原作『S-最後の警官-』の魅力って?

テレビ

更新日:2014/1/28

 TBS系列で日曜9時から放送中のアクション刑事ドラマ『S-最後の警官-』が好調だ。初回平均視聴率が18.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、1月19日放送の第2話は15.2%と、今季ドラマではトップクラスの数字を誇っている。『福家警部補の挨拶』『戦力外捜査官』と本格謎解きが主体の刑事ものが多い今シーズンのなかで、アクションを中心に据えた『S』が人気を勝ち得た理由は何だろうか。「向井理、綾野剛という旬の俳優2人を揃えたから」というだけでは、(「SP」といったごく少数の例外を除けば)近頃珍しいアクション刑事ドラマが支持される説明にはならないだろう。そこで今回は、原作マンガを解剖し、『Sエス-最後の警官-』(小森陽一:原作、藤堂裕:イラスト)の魅力に迫ってみたい。

【魅力その(1) 犯人「確保」という難題】
 通常の警察官が対応できないようなテロ・凶悪事件を制圧、つまり犯人を殺してでも国家の安全を守るために存在する“S”と呼ばれる警察特殊部隊、「SAT」と「SIT」。その2つの部隊に対し、いかなる凶悪犯であろうとも殺さず確保することを目的とした新設の部隊、警察庁特殊急襲捜査班=「NPS」の活躍を描く、というのが『S』のストーリーである。

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 凶悪犯を生きて捕えなければならない、という縛り。これこそが『S』の最大の特徴である。

 無論、NPSが相手にする凶悪犯は強力な武器を使用し抵抗してくる。なかには手りゅう弾や鉄板をも貫通する自動小銃など、軍隊並みの兵器で襲い掛かってくる犯人たちも登場するのだ。そのような状況下で、如何にして犯人たちを殺さず捕まえることができるのか。NPS隊員たちの体を張ったアクションと同時に、犯人を生かして捕えるための頭脳を駆使した作戦が毎回展開する。ラストは犯人射殺でスカッとする、というのが主な売りだった80年代のバイオレンス刑事アクションと比べ、犯人を捕らえるまでの過程における緊張感やサスペンスに重点を置いたアクションドラマなのだ。

 加えて犯人制圧第一のSATとの対立、そして犯人確保にこだわるNPSを「ある計画」に利用しようとする警察上層部の不穏な動きなど、「相棒」などにも通ずる警察内幕ものとしての醍醐味も備えている。

【魅力その(2) プロフェッショナルたちの集団捜査】
 チームもののドラマに欠かせないのが、突出した技能を持つキャラクターたちの存在。元ボクサーで己の拳のみ使って犯人を捕らえる主人公、神御蔵一號巡査(第1話でアパートの壁をぶち破り、犯人にパンチ!)をはじめ、警察犬訓練の名人、バイク乗りの名人など、各分野で突出した技能を持つプロフェッショナルたちが集い、各々の持ち味を発揮することによって事件を解決するのだ。こうしたエキスパートばかりが集まったチームによる捜査は、『NCIS』『CSI』といった海外ドラマに近いテイストを感じる。

 もちろん、神御蔵をライバル視するSAT隊員でライフル狙撃の天才、蘇我伊織など、NPSメンバー以外のキャラクターも要注目だ。

【魅力その(3) いまそこにある危機を描く】
 「日本はテロとか無縁だし、この漫画で起こる事件ってリアリティ無いんじゃないの?」と思う方もいるだろう。

 しかし、『S』で描かれる事件は地下鉄サリン事件、07年の愛知における立て籠もり発砲事件など、平成日本で発生した凶悪犯罪に着想を得たものが多く、現実でも起こりうる出来事として受け止める読者もいるはずだ。つい先日も愛知で散弾銃を持った男の立てこもりがあったばかりである。『S』の世界は絵空事ではないのだ。

 以上3点が『S』の主な魅力である。武力制裁によるカタルシスが山場の刑事アクションとはちょっと異なるポリスストーリーを、ぜひドラマでも原作でも堪能していただきたい。

文=若林踏