アナタの意見は偏見に満ちている!? 考えるときの脳のクセ「認知バイアス」とは?

科学

更新日:2014/2/14

 人というのは何かを見たり、聞いたり、考えたり、決定したり、意見したりするとき、ほぼ確実に偏見にとらわれているそうだ。そんなことをいうと、「そんなことはない! 私には偏見は一切ない! 常に公平に物事を判断している!」という人がいるかと思うが、そんな人には『自分では気づかない、ココロの盲点』(池谷裕二/朝日出版社)をオススメしたい。

 本書では、脳科学や心理学などで科学的に研究されている「認知バイアス」の問題を質問形式でわかりやすく解説している。この「バイアス」とは「先入観、偏見」という意味で、「認知バイアス」とは人間が物事を見る際、これまでの経験や先入観、人の意見などにとらわれ、色眼鏡をかけて見てしまうという現象のことを指す。

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 この認知バイアスには多くの項目があり、以前ダ・ヴィンチニュースでも取り上げた「災害時、人が逃げ遅れてしまう理由“正常性バイアス”とは」という「正常性バイアス」もそこに含まれるものだ。正常性バイアスとは、ある限界までの異常は正常の範囲内と捉えることで脳がパニックにならないための予防なのだが、それがバイアスとなって予期せぬ異常や危険、災害時などの際に「まだ大丈夫、自分が巻き込まれるわけがない」という偏見や先入観から逃げ遅れてしまう危険性が高まってしまうものだ。

 本書には認知バイアスに関する30個の質問が掲載されているのだが、その中からひとつ見てみよう。

 醤油ラーメンを食べたくなり、たまたま向かいにあった繁盛店の行列に並ぶことに。しかしその店は塩ラーメンが有名な店で、周りも塩ラーメンを注文している……この場合、どちらの行動を取る人が多くなるだろうか?

1 当初の希望通り醤油ラーメンを注文
2 看板メニューの塩ラーメンを注文

 塩ラーメンが有名な店で、周りがみんな塩ラーメンを頼んでいるという状況、しかも行列に並んだ後でようやく店に入ったという手間もあり、友人に「あの店に行ったのに塩ラーメンを頼まないなんて、ありえない!」などといわれるかもしれない可能性がある中で、「醤油ラーメンひとつ!」と初志貫徹して注文できる人は少ないのではないだろうか? これは「バンドワゴン効果」と呼ばれる項目に関する質問で、バンドワゴンというのはパレードで先頭を行く楽隊車のこと。人というのは周囲の意見や流行に影響されがちで、楽隊車が行く方へパレードがついて行ってしまうことから「バンドワゴン効果」と名付けられているそうだ。ということで、この場合は「2」を選択する人が多くなるそうだ。

 これ以外にも迷信や慣習・ゲン担ぎなどを生む「少数の法則」、自分の仮説や信念に一致する例を重要視する「確証バイアス」、「人間見た目じゃない!」といいながらも目立つ特徴に着目して全体を判断する「ハロー効果」、同じ情報でも置かれた状況でまったく違う判断をしてしまう「フレーミング効果」などの質問と解説があり、巻末には認知バイアスの代表的な用語183項目をリスト化し、丁寧に説明している。

 ちなみに人間は自分のことを不公平だとは考えておらず、「あなたは平均よりも公平か? それとも不公平か?」と質問すると、ほぼ100%の人が「平均よりは公平」と回答するそうだ。これは「平均以上効果」と呼ばれている認知バイアスで、誰もが「自分は不公平ではない」と思っていることが差別やいじめにつながってしまうんだそうだ。考え方にはどんな癖があり、どんな盲点があるのかを知って思い込みを取っ払い、謙虚に生きたいもんですね。

文=成田全(ナリタタモツ)