作者ゆでたまごが語る ドジで気弱な最強のヒーロー・キン肉マンの強さの秘密

マンガ

公開日:2014/2/15

 「週刊少年ジャンプ」1979年22号に連載第1話が掲載され、一瞬にして少年達の心を掴んだ『キン肉マン』。今年は生誕35周年の記念イヤー。『ダ・ヴィンチ』3月号「マンガヒーロー&ヒロインランキング」特集では、ヒーロー「キン肉マン」がいかにして生まれ、子供のみならず、少年だった大人たちの心を今もなおつかみつづけているのか、その理由を著者・嶋田隆司(ゆでたまご)に直撃している。

――キン肉マンというキャラクターは、下品でドジで気弱で、努力が嫌い。みんなに笑われる、かっこ悪いヒーローだ。だが、プロレスバトルを描き継いでいくうちに、読者から意外な声が聞こえてきた。

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「超人オリンピックの決勝戦、ウォーズマン戦が終わった頃に、子供たちの声をナマで聞く機会があったんですね。今でいうジャンプフェスティバル(年1回開催される『少年ジャンプ』の読者参加型イベント)なんですけど、司会者の“好きなキャラクターは?”って質問に対して、“キン肉マン!”と言った子供がいたんです。どうしてって聞いたら、その子が“かっこいいから”と言ったんですよ。ウォーズマンに勝ったキン肉マンが、リングのコーナーポストに上がってチャンピオンベルトを掲げる、その絵がめちゃくちゃかっこよかったと言ったんです。僕ね、それ聞いて、“えっ、こんなブ男なのにかっこいいって思えるんや”とびっくりしたんですよ。そこからですね。かっこ悪い造形でも、活躍の仕方によっては、かっこよく見える。その二面性を出していったら、この作品はいいんじゃないかと思ったのは」

 二面性は、『キン肉マン』にとって最大のキーワードだ。なにしろ我らがヒーローは、普段は弱いが、戦うことを決意したら、強い。

「悪魔将軍みたいに怖そうなやつが目の前に現れると、すたこらさっさと逃げていくんですけどね(笑)。それってね、正直な気持ちやと思うんですよ。でも、その悪魔将軍にやられてしまった仲間のことを思うと、戦う気持ちがわいてくる。“仲間のために”というモチベーションがのっかっていくことで、キン肉マンは強くなるんです。“なんのために戦うのか?”という、戦う理由はすごく大事ですね。そこが希薄だと、読者もぜんぜんノってきてくれない。僕らのマンガで勝敗を決めるのは、努力とか才能じゃなくて、戦う理由の強さなんです」

構成・文=吉田大助/ダ・ヴィンチ3月号「マンガヒーロー&ヒロインランキング」特集