AKB48のあのゲームからSTAP細胞まで! ユニークな特許あれこれ

ビジネス

更新日:2014/2/22

 “必要は発明の母”とは良く言ったもので、洗濯機の糸くずをキャッチする「クリーニングボール」、「大きさの変わる落し蓋」、カカトのない「初恋ダイエットスリッパ」──みんな主婦が発明し、莫大な特許料を手にした。先日話題になった新たな万能細胞・STAP細胞も、もちろん特許出願(海外でも)されている。

 その一方で、吉村作治氏が京大・早大・黄桜との共同プロジェクトで「古代エジプトビール」を再現して特許を取ったり、秋元康氏がAKB48の恋愛シミュレーションゲームのシステムで特許出願したりしていたりもする。

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 身近なモノから人類の希望をのせた世紀の発明まで様々な発明が何千何万と特許申請されているが、そもそも「特許」たりうる「発明」って何なのか?

「発明とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法第29条第1項より)

 分かるようで分からない。その解説が特許庁のHP内に「産業上利用することができる発明」の解説が掲載されているのだが、全60ページに渡って細々と書かれており、それをいきなり読んで解釈するのはハードルが高い。

 例えば「“発明”に該当しないものの類型」という項目には、「コンピュータプログラム言語」「遊技方法(自然法則を利用していないもの)」という記載がある。

 でも、AKB48のゲームで秋元センセイは特許出願してるよね? ゲームって、コンピュータを使った遊技だよね? そう思って先を読むと「ゲーム用コンピュータ・ソフトウエアという観点から発明すれば、“発明”に該当する可能性がある」と書かれている。言語とソフトでは何が違うわけ? これだから法律ってやつは…とお嘆きのあなたに紹介したいのが、『すばらしき特殊特許の世界』(稲森謙太郎/太田出版)だ。

 本書において稲森氏は、数ある特許の中から、面白い事案を「特殊特許」としてピックアップ。それぞれの具体例を取り上げながら、特許とは何か、特許申請の仕方、最新の特許事情などを教えてくれる。

 先の「AKB48」のゲームのことも、バッチリ説明してくれている。該当箇所を要約すると──

・ゲームは人間が考えた「遊びのやり方」なので、原則「人為的な取り決め」となり、発明には該当しない。例えば、トランプや花札で新しい遊び方を考えても特許にはできない。
・しかし、ソフトウエア(コンピュータプログラム)で実現されるゲームは話が別。「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源(コンピュータやその周辺危機)を用いて具体的に実現されている」ので、そのソフトウェアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」となる。(本文より引用)。

──ということらしい。むりやり解釈して「自然法則を利用」しちゃっているが、法律とは解釈論みたいな側面もあるわけで。

 他にも、あのiPS細胞騒動の主役・森口尚史氏の「C型肝炎薬」出願話(しかも本人のインタビューあり! これがかなりスリリングで面白い!)や、ニッスイの「塩味冷凍枝豆特許」、越後製菓vsサトウ食品の「切り餅の表面の切れ込み」を巡る戦い、「絶対に離婚しない指輪」など、特許にまつわるエピソードがズラリと並ぶ。それぞれに「特許の読み方」が書かれており、読めば読むほど、あなたも特許の世界に親しみを感じられるようになるはずだ。

 最後に。未来の特許権者のあなたにひとつアドバイス。

 日本の特許は、先に出願した人が優先される、「先願主義」。何かを思いついても、ネットで公開したり、むやみに人に話したりしないよう、ご注意あれ。

 もっとも、巨万の富を得る発明者となるか、本書の続刊(?)で紹介される珍発明の特許権者となるかは、あなた次第だけれども。

文=水陶マコト