将来子どもが就活で困らないための子育て術とは

出産・子育て

公開日:2014/2/28

とある映像スタジオで働いていたときの話。スタッフ募集があり、とある応募者に対し、「書類審査の結果、不合格」だと連絡を入れた。しかし、本人が「どうしても面接して欲しい」と粘り、結局、社長が面接することになった。社長に尋ねた──なぜ、面接するんですか?

 社長の答えはシンプルだった。

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「一緒に働きたいと思えれば、採用すればいいじゃん」

 その熱意と粘り強さがあれば、伸びるかもしれない。だから、その応募者の人柄を面接で確認しよう、と。これは大企業の話ではないけれども、就職活動において、採用における企業側の最終的な判断は「この人と働きたいかどうか」という「印象」に尽きるのだな、と思った。

 『8歳からの内定獲得術』(竹内謙礼/日本経済新聞出版社)には、ずばり、そのことが書いてある。竹内氏は、就活に負けない人材の絶対条件を2つ挙げる。
・より優れた人材であること
・第一印象の良い人材

※「より優れた人材」という言葉には、引っかかるものを感じるが、竹内氏は「採用する企業が求めている人材とのマッチング度が高い人材」と定義した上で使っている。

 まずハッキリ伝えておかなければならないのは、あくまでも本書は「就活」──書類応募、各種テスト、面接をクリアして、「内定」を得るまで──に限定特化した「子育て論」だということ。「就職後」の仕事力については対象外としているので、実際に社会で活躍できる子かどうかは、また別の話。
 それを踏まえた上で、「就活で負けない」ためには、どんなことを意識して子育てすると良いのだろうか? 本書にはいくつもの指針が示されているが、そこから3つを紹介したい。

■就活のための人材育成は8歳から
 「(学力や印象が)身につくのは、小学校に入学してから、ある程度、物の分別が付き始める頃、つまり8歳ぐらい、小学校2~3年生の頃」だとある。若干、あいまいな数字だが、小学校低学年で学力差も、人柄も差異が出始めているのは確か。学習意識や、対人関係の基礎を身につけているかどうかで、将来は大きく変わるだろうというのは、想像ができる。

■親は子どもと積極的に話をしよう
 面接官は多くの場合、自分より年上の世代だ。親や祖父母と多く話をすることで「世代を超えたコミュニケーションスキルを磨く」ことができる。初見で年の離れた面接官に「今、自分が何を質問されているのか」を、瞬時に把握し、自分の言葉で的確に伝えられるかどうか、それが面接でのカギを握る。「今、それは聞いてないよ」と、就活の面接で叱られた筆者は(泣)、コミュニケーション能力の重要性を強く訴えたい!

■子どものファッションを甘く見ない
 服装や髪型のことなんて、子どものうちから意識させてどうすんの? と思う親は少なくないだろう。だが、ブランドや高級品志向ではなく、あくまでも「“人に見られる”という意識」なら、話は別だ。就活において第一印象が重要であるなら、髪型・体型・清潔感・スーツの着こなし、配色のセンス、それらはどれも重要。就活直前になって、マニュアル本を読んで整えた人と、自然にできてしまう人では、印象の違いは一目瞭然だろう。学生のころ、同じ制服を着ていたって、着こなしの良し悪し、オシャレな人とそうでない人がいたように。お金ではなく「意識」を高く払うべし。

 他にも、本書ではアンケートから導き出した「有利な条件」が提示されているが、結局のところ、「コミュニケーション能力」の高さが、問われているのだと、感じた。印象も、面接でのやりとりも、就活シートに書く文字の美しさ、資格の有無も、すべては「自分はこんな人間です」と伝えるための、コミュニケーションの手段に過ぎない。就活に負けない子どもを育てるために、親がすべきことは、つまり、人間として子どもと社会と真摯に向き合うことなのではないだろうか。

文=水陶マコト