ガンダム、受験戦争、就職氷河期…アラフォー男はなぜかくも毎日憂鬱なのか?

社会

公開日:2014/3/22

 「尾崎豊じゃないけど、盗んだバイクで本当に走れたのがバブル世代で、その時に盗めずに憧れだけが残っちゃったのが団塊ジュニアなんじゃ…」

 同じ時代を生まれてきたのに、女はどんどん外向き&ガツガツモードへ、男はどんどん内向き&ジメジメモードへ。このまま我々は交わることなく、人類は滅亡してしまうのではないか?

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 そんな不安に駆られ、彼らを理解すべく『アラフォー男子の憂鬱』(常見陽平、おおたとしまさ/日経プレミアシリーズ)を開いてみた。が、正直、購入したことをすこぶる後悔。タイトル通り、自らの「憂鬱」と真摯に向き合うのかと思いきや、そんな潔さはまるで皆無。代わりにガンダムや筋肉少女帯やファミコンやオールナイトニッポンや受験戦争や就職氷河期についてだらだらと回想を続ける。「俺たち、損しているよね」「うんうん、してる、してる」と、いい歳したおっさん同士で言い合うのがいかにも気持ちがよさそうで、正直、同世代の女としては、気色悪い。

 何よりうんざりするのが、執筆者全員、自己承認欲求と被害妄想が異様に強いところ。男としての未熟さについつい目がいってしまう。

○「ちょいワル」にならせてもらえない僕たち
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 自分たちの上の世代は、やれ「ちょいワルオヤジ」だなんだと浮かれたモードの消費イメージで語られるのに、自分たちの世代は、もう一度妻を口説かされたり(本当に妻が桜井幸子なら文句は言いませんが)、妻とビールを買って家に帰るなど、生活に身をやつしていたりするイメージの堅実な消費者像としてしか描かれないのはなぜでしょうか?
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○バンドブームと僕たちのキャリア―誰でもヒーローになれる時代の終わり
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 あたかもバンドブームのヒーロー、ヒロインたちに自分を重ね合わせ、自分もそうなれると思っていたが、そうならなかった。約束されたものに裏切られた気分だ。
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○不完全なものばかりを試させられ続けたアラフォー世代
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 しかし、残念なことに、戦後、一貫して大人たちの生活を支えていた経済成長は、僕たちが社会に出る前に、バブル崩壊とともに腐り落ちてしまった。
 僕はこの一連の、僕が生まれてから今までの変化に対して、ただ一言、心の底から言いたい。「ズルい!!」
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 論客という職業柄、たまたま、こういうジメッとしたタイプの男たちが集まっただけなのかもしれないが、にしても「~された」表現の多さには辟易する。それこそ、「チラシの裏にでも書いてろ」レベルである。

 この本を読み出した早い段階で、「アラフォー男の憂鬱を理解する」から、「アラフォー男に対するイライラの要因を探る」ことに目的をシフトしたのだが、きっとそのイライラの根源は大きく2つあるのだ。1つはなんでもかんでもお茶を濁し、自分自身で結論づける覚悟が極力欠如している点。もう1つは「だって、僕らって○○世代だし」と、できない・やらない理由をいちいちラベリングして、それで満足してしまうモチベーションの低さ。

 受験勉強時のお夜食選びで「うどんがいい? おそばがいい? それともラーメン?」とママに聞かれ、ただひたすら首を横に振り続ける男子学生と一緒。自分から「チャーハン作るよ!」とは決して言わない。それが典型的なアラフォー男の生き様といえばそうなのかもしれないけど、にしても、この本の執筆者らは何でもかんでも「自分のせいじゃない」と言いすぎ。TAKEばかりを求め、GIVEに目がいかないのは、時代のせいばかりじゃないはずだ。

 盗んだバイクで走り出してもいないくせに、行き先もわからない中年のおっさんよ。いい加減、目を覚ませ! と言いたくなるのは、厳し過ぎるのだろうか。

文=山葵夕子