“キスはバクテリアを交換するから長生きの秘訣”リケジョの可愛い恋愛観!

生活

公開日:2014/3/24

 理系大学の女子学生や志望者、女性研究者を総じて、リケジョ(※講談社の登録商標)と呼ぶようになった。昨今のSTAP細胞騒動で見聞きした人も多いだろう。男女比でいえば、9:1という少なさの中において、彼女たちは臆することなく、独特の個性を発信し続けているようだ。そんな生態に迫っているのが、みやーん著『理系女子あるある』(理系女子大生コミュニティ凛:監修、村澤綾香:イラスト/トランスワールドジャパン)。可愛らしいポップなイラストと文章で、知られざる世界を覗き見できる内容になっている。

 彼女たちの思考回路には理系のプロセスが組み込まれているため、大半を占める文系の女子が抱く感想や感動とはかけ離れた、一種独特の感性が発揮される。たとえば、キスシーン。ドラマや映画、はたまた街角で見受けられる男女の熱い行為を目にしたとき、たいていは恋愛に関する想いが駆け巡ったり、もしくは嫌悪感を示したりするはず。でも、リケジョがキスシーンに出くわすと「大量のバクテリアを交換し合っているのね!」となる。薬学博士の木村美紀氏によれば「キスをすると長生きする」と説く。ホルモンの分泌、アドレナリンの放出、快楽を抱くといった面と同時に、前出した現象を通して、寿命が伸びるそう。だとすれば「長生きしたいなら、キスしようよ」と、意中の異性に迫ることができるかもしれない。しかし、それは、文系ゆえの妄想だろうか…。

advertisement

 そんな彼女たちの恋愛に対する姿勢も、理系ならでは。友達同士で恋愛話をするときには、化学反応に例えて自分の願望を語ることも。独り身同士のリケジョは「夏までに単体から化合物に戻りたいな」、「え~! 私は希ガスのままでいいや」といった調子で語り合う。そして、彼女たちがオシャレで重視することは、約5:8の黄金比。映画のスクリーンサイズや、アップル社のロゴマークに用いられている法則を、ファッションに取り入れるのである。身長にヒールの高さも含めた全体の5割に、ワンピースの丈を収めるのが鉄則だとか。そうすることで、自分自身で納得がいき、気持ちよく外出できるという。外面だけでなく、美容や健康といった内面を磨くサプリメントを摂取する際には、裏のラベルを凝視して成分表を熟読する。そして、成分のひとつひとつを調べて、納得のいくものを購入するとのこと。リケジョならではの知識や探究心が、こうして恋愛にも役立つのである。

 いよいよ念願の彼氏ができて、デートをするときにも、リケジョらしさは失われない。ドライブの途中で車を停めて、美しい夕陽を眺めるようなロマンチックな場面では「なんで赤いのか知ってる? 短波長が散乱して届かないんだよー」と、彼氏に教えてあげるのだ。大空に広がる夕陽を前にして、うっとりと並んで眺めながら、愛の言葉でも語り合い、キスをするのにもってこいの場面で、冷静沈着な分析が発せられる彼女の唇を、彼氏はどのような気持ちで見つめるのだろうか。そんなセリフにもめげずに、自分の部屋に呼ぶことに成功した彼の部屋を見て、またもや理系の血が騒ぐ。「エントロピーが増大しているわ…」。もっとも、部屋を片付けなかった彼の準備不足は肯定できるものではない。この場合、彼女の冷静な考察によって、単なる現象として捉えられているようなので、彼にとっては救いといえるかもしれない。

 リケジョにとって、理想の彼氏像は、やはり理系男子。専門的な会話も通じるし、自分よりも豊富な知識に接すると、胸がときめくのだそうだ。また、実験をテキパキとこなしている姿にも、男らしさを感じるという。そして、ついに結婚を決意したときには、3月14日を入籍日にすることが多いとか。その理由は、円周率。3.14で表される円形は、“永遠に続く”象徴として、彼女たちの心をつかむのだ。

 理系といえば、理路整然とした思考回路で、あたかもロマンチシズムとは程遠い存在のように思われがち。だが、本書に描かれているリケジョあるあるを垣間見ていくと、多くの女の子が夢に見るような、王子様との恋愛に憧れていることがわかる。彼女たちはたまたま数式や実験や機械が好きなだけで、中身は可愛い女の子。そんな彼女たちの王子様になるには、今から理系の勉強をしなければなるまい。と、心に誓うだけで、いつまでも妄想し続けるのが、文系男子のか弱さなのであるが…。

文=八幡啓司