ついには著書まで出版! 高校野球中継に必ず映り込む“ラガーさん”をアナタは知っているか?

スポーツ

公開日:2014/3/28

 春を告げるセンバツ高校野球がただいま絶賛開催中。テレビで目にしている人も多いだろう。その時、どの高校のどの選手よりも、テレビに映っている人がいることを知っているだろうか?

 そんな人いるの? と思われるかもしれないが、試合中継を見た時に、バッターの後ろ、バックネット裏の観客席に注目してほしい。きっと最前列、テレビ画面やや右側に、ラガーシャツを着て、黄色い帽子を被ったオジサンが座っているのを見つけられるはずだ。え? どうしてお客さんが選手よりもテレビに映るのか? 実はこのラガーシャツのおじさん、通称“ラガーさん”と呼ばれる、高校野球ファンの間で有名な「春夏甲子園全試合バックネット裏最前列観戦男」。繰り返し強調するが「春夏甲子園」「全試合」「最前列(の同じ席)」観戦である。甲子園は優勝チームでも試合数は最多で春なら5~6試合、夏なら6試合。そう考えれば、このラガーさん、選手よりもテレビに映っているというわけである(厳密には映り込んでいる、ではあるが)。

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 実はラガーさん、数年前より高校野球マニアの間では、「あの人またいる」と、存在は認知されていた。それがここ最近、メディアで取り上げられる機会が激増し、知名度もアップ。今や甲子園を訪れる人に記念撮影を求められるほどの存在になっている。そしてついに、先日、ラガーさんは著書『甲子園のラガーさん』(善養寺隆一/オークラ出版)を上梓するまでに。

 著書の中では、おそらくラガーさんのことを知った人のほとんど抱くであろう疑問の答えにも触れている。たとえばその仕事や生活、ラガーシャツを着る理由などなど。そして、なぜ毎試合同じ席、それも最前列をキープできているのか。

 最後の疑問に関しては、少し事情を紹介しよう。実は、甲子園にはラガーさん以外にも常連観戦客は多く、彼らにはそれぞれ定位置の座席があったりする。といっても、ラガーさん含め、みなその席の指定席をキープしているわけではない。そもそも甲子園には指定席は存在しないからだ。ではどうやって毎試合、キープしているのか。答えはシンプルだが、壮絶なもの。彼らは、毎日、球場の開門と同時にダッシュで席をキープしているのである。

 ちなみに甲子園の開門は、通常、早い日で朝7時。しかし、もしあなたが7時に甲子園を訪れてもバックネット裏最前列をキープするのは至難の業だ。なぜなら、その時間、すでに常連を含む観戦客は、門の前に並んでいるから。そう、多くは徹夜組、前の日の晩から門の前に並んでいるのである。ラガーさんの場合、それが全試合になるので、甲子園大会開催中は「試合終了→並ぶ(甲子園の門の前で野宿)→試合観戦→試合終了→並ぶ(甲子園の門の前で野宿)」というサイクルの繰り替えし。まさに「甲子園に住んでいる」ような生活を送っているのである。

 国民的人気を誇る高校野球。その周辺には、こんなマニアックな世界があったりするのである。その衝撃をぜひ本書で味わってほしい。ちなみに巻末にはラガーさんの「ラガーシャツぬり絵」付き。これもまた衝撃である。

文=長谷川一秀