安易に「共感したらシェア」しちゃダメ! ネットの「釣り」の手口にダマされない技術

IT

公開日:2014/4/28

 「ハーバード大学図書館、朝4時の風景と壁に貼られている20の名言」や「隣の席が黒人だと憤慨した白人女性にキャビンアテンダントが取った対応は、黒人をファーストクラスに連れて行ったというもの」「ゲーセンで出会った不思議な子の話」などのエピソードをFacebookやTwitterで目にした、あるいは良い話としてシェアや拡散した読者もいるのではないだろうか?

 実は、これらは虚偽の情報だ。それ以外にも「共感したらシェア」「すごいと思ったらシェア」などの一文を添えて拡散される画像や投稿は枚挙にいとまがないが、そのほとんどが同様のものだ。STAP細胞騒動もその一種だが、いくらすごい話、良い話でも、虚偽に基づくものであれば、その価値はないに等しい。何よりもそれを評価し、広めた自分自身があとでバツの悪い思いをすることになる。原発事故後の放射能について、不安を煽るような情報もネット上には溢れかえった。人はなぜ、そのようなものを目にすると、事の真偽や出どころも確かめずついシェアしてしまうのだろうか。そして、なぜこれほどまでに“デマ”が広まりやすいのだろうか。

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 わたしたちは、あるフック(釣り針)に反応してしまい、何かアクションを起こしたくなる。それが特定の人間によってコントロールされているものであれば「釣り」、誰の支配も受けておらず、勘違い、不安、思い込みといった負の要素を栄養にして膨れ上がるのが「デマ」であると、『2ch、発言小町、はてな、ヤフトピ ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス)内で著者のHagex氏は述べている。氏は巨大掲示板2chや女性向け掲示板・発言小町などで起こる炎上事件を観察し、投稿されたエピソードが「釣り」かどうかの検証を行う「Hagex-day info」ブログを運営してきた。その経験から見えてきた「釣り師」の手口について自作の例文も交えながら解き明かしているのが本書である。

 「釣り」とは、創作文や嘘の内容で読者を騙す行為のことで、「釣り師」とはそれを行っている人のことをいう。釣り師たちは、真実ではなく創作したもの(嘘)を投稿するので、いわば「クリエイター」に当たるのだが、なぜ多くの場合一銭の見返りもないのに「釣り」をし続けるのか。彼らを「釣り」へと駆り立てる4つの動機を挙げて解説。さらにそれを手がかりに、投稿された内容が本物か「釣り」かをマクロ視点で判断するテクニックと、細かく文節単位でチェックしたり画像から足跡をたどるなど機械的に判断できるミクロ視点でのテクニックも伝授している。

 

 ただ、注意したいのは、筆者は「釣り師」や「釣られる人たち」を否定するために本書を執筆したわけではない。本書の読者が、ネットリテラシーを向上させ、「釣り」かそうでないかを判断するコツを身につけることで、よりコンテンツを楽しめるようにする、ということが狙いだという。 さらに、冒頭に挙げたようなデマを見抜き、自分が誤った情報の拡散源になるのを防ぐとともに、原発事故の後起きたような社会の混乱を招きかねないデマという「妖怪」を退治する方法も伝授している。

 

 今まで、心揺さぶるコンテンツを見つけては、自分の感情に任せて「いいね!」ボタンや「シェア」リンク、リツイートボタンをクリックするなどして周囲に拡散させていた人も、本書を読めば、真実か、「釣り」もしくは「デマ」かを見極め、広めるべきか否かを考えるようになるはずだ。また、最終章の「元釣り師」へのインタビューは本書で解説してきたことを裏付けるものとなり、普段見ることができない彼らの真の姿を明らかにしてくれるので必読だ。

文=渡辺まりか