オシャレでも、いい人でもなくてもいい! エンゲル係数約6割! 男性用トランクスを愛用! 40代独身女のぽっちゃり道とは

コミックエッセイ

公開日:2014/5/11

 先日、お笑い芸人・渡辺直美がプロデュースするブランド「プニュズ(PUNYUS)」が、渋谷109に1号店をオープンさせた。ぽっちゃりした女性向けファッション誌『la farfa(ラ・ファーファ)』(ぶんか社)が隔月発売の定期刊行誌となり、“ぽっちゃりでもオシャレを楽しむ”という機運が高まっている。しかし、当たり前だが、ぽっちゃりした女性の中でも、オシャレに興味がある人がいれば、いない人も。そんな中で「ありのままの自分でいい」と、女性だけでなく全ぽっちゃり人を肯定するのが、イラストレーターのミチマドカ氏のエッセイ『でぶりしゃす!』(新潮社)だ。

 ミチ氏は44歳、バツイチ・独身、90キロ台の“激ぽちゃ女子”だ。16年ぶりに活動の拠点をシンガポールから日本に移したところ、「太っているだけで白昼堂々と迫害される今日の日本」に驚いたという。そしてそれ以上に違和感を覚えたのは、「デブ自身がデブ迫害を正当なものとして受け入れていること」だった。ミチ氏は「デブを笑いの要素にできるデブ」「陽気なデブ」になれば相手にポジティブな印象を与えることができるとしながらも、外見で他人を判断する人に陽気に振る舞うのは時間がもったいないと話す。つまり、オシャレをしたり気を遣ったりして、「愛されデブ」になる必要はない。「まともな人だけつきあってりゃいいのよ」という力強いひとことが、胸にずしんと響く。

advertisement

 30代後半から一気に30kgも太ったというミチ氏。中年になって「若さ」という免罪符がなくなったことで自分を見つめ直すと、「自分を自分以上によく見せたいと思わなくなったと言うか 物欲とか色欲とかすっかり消滅」し、好きなものを好きなように食べたいという食欲だけが残ったという。

 シンガポールで暮らしていたときは、GoogleのGmailアカウントに「日本に帰ったら食べる物」というタグを作り、食べ物や飲食店の情報を書いたメールを自分宛てに送信。いまだにクリアしていないものは、削除していないという。

 日常も食べ物優先の日々。1カ月の支出のうち、なんと57%が食費。現在、千葉の“田舎”に住んでいるミチ氏は、ケンタッキーフライドチキンが食べたくなったら、車でひと山越えてまで手に入れる。新宿在住の妹の家をたまに訪れては、自宅が配達外になっているドミノ・ピザを食べ漁り、仕事で出版社に行くときも周辺のお店情報や社食情報までチェックするという筋金入りの食いしん坊なのだ。「食べたいものを食べるって幸せじゃん」という彼女の考えは気持ちがいいほどだ。

 ファッションアイテムも、実用的なセレクト。「放尿とか破水レベルの汗がでるため」に夏こそスカートはNG。そこで、ミチ氏が愛用しているのは男性用のトランクス。前開きの構造が通風性抜群で手放せないそう。ここでも、ぽっちゃりであることを自然に受け入れ、“楽なアイテム”を追い求めている。

 ぽっちゃりを言い訳にせず、自分の気持ちに正直に生きる。本書の根底に流れているのは、ミチ氏のそんな思いだ。ぽっちゃりな自分に自信を持てない人だけではなく、向上心を持って過剰に頑張ってしまう現代人にこそ響くメッセージが隠されているだろう。