ストレスでやられる前に 打たれ強さが身に付く思考法

ビジネス

公開日:2014/5/12

 いわゆる5月病か、毎年GWを過ぎたあたりから会社を辞める新入社員が増えるらしい。初めてのことの連続で、いろんなことを一気に詰め込まれ、わからないままに仕事をしながら上司に叱られたりするうちに「こんな仕事をするなんて聞いてない!」「もう耐えられない!」と思ってしまう人が多いようなのだ。こんなことを聞くと、また「最近の若者は……」と言われてしまいそうだが、なかにはストレスがあることを感じさせないような、打たれ強い人もいる。4月14日に発売された『引きずらない人は知っている、打たれ強くなる思考術』(豊田圭一/クロスメディア・パブリッシング)によると、実はその打たれ強さもスキルで身に付けることができるというのだ。その方法とは、いったいどんなものなのだろう?

 打たれ強い人は、どんな困難な状況でも耐え抜いて未来を切り開いていける人だと思っているかもしれないが、そういう人こそ実際は「本当に無理だったら最後の最後は逃げる」という選択肢を持っているよう。背水の陣で頑張れる人もいるだろうが、それで我慢して無理をしたり、「今の環境に固執」する必要はない。「他人と過去は変えられない」のだから、ダメだったら逃げたっていいと思いながら、今は自分にできる最善を尽くそうと思って頑張ればいいという。

advertisement

 著者も、入社した会社で思い通りの仕事ができず、先輩から会社を興すけど「一緒にやる?」と言われ、「ここから逃げ出せるならなんでもいい!」と思ってついていったそう。でも、そのおかげで英語を話せるようになったり、今のキャリアにつながっているので「自分の中であの選択ほど最良の選択もなかった」とも思っていると語っていた。だから、逃げたことに目を向けて引け目を感じるのではなく、「逃げた」あとに頑張って「逃げたことを最良の選択に変える」ことで、自分を打たれ強い人に成長させることもできる。

 リーダーや周りを引っ張っていく立場になると、その分責任やプレッシャーは増す。しかし、そんなときこそ「何でも抱え込むよりも、人に素直に助けを求める」ことが大切なんだとか。必ずしも「リーダー=なんでもできる人」ではないし、自分で何でもやるより、適材適所で人に任せたほうが生産性も上がる。それに、自分が「できない」という前提に立つからこそ、「部下よりも自分のほうができない」という恥ずかしさや躊躇をなくせるし、そのことでストレスを感じることもなくなる。これは年齢に関しても同じで、年上だから優れているとか、なんでもできるということではない。その恥ずかしさをなくすだけで、精神的にもずいぶん負担は軽くなるのだ。

 また、日本人には、たとえTOEICで900点取れていても「私は英語ができません」と言う人が多い。本人たちは、謙遜でもなんでもなく、テストのスコアは高くても、それだけで英語はできないと思い込んでいるのだ。しかし、せっかく実力があるのに、自信がなくて実践を避けていたら、いつまで経っても自信はつかない。たしかに、「英語がペラペラ」の人と比べたら「英語ができない」かもしれないが、ベトナム語やほかの言語に比べたら、かなりの英単語を知っているし、簡単な文法もわかっている。でも、実際に英語が公用語ではないベトナムのような国で、少しだけ英語が話せるという人と会話してみると、案外会話できたりするそう。

 英語に限らず、こういった「できない」というメンタルブロックを壊し、たくさんチャレンジしていくことで自信はついてくる。自分を低く見積もって落ち込んだり、自分自身を否定された気になるのではなく、「得意ではないのだから間違えるのは当たり前!」、相手にあしらわれたときも「たまたま今日は機嫌が悪かったんだろうな」と考えて気持ちを切り替えればいい。そんなことで悩んでいる暇があったら、目の前のことに全力で取り組み、ひとつでも多くの「できない」をなくすことの方がよっぽど有意義だ。

 今、仕事で悩んでいる人も、もう一度こういったポイントを見直してから本当に辞めるべきかどうか決めてみてもいいのではないだろうか。

文=小里樹