プロが明かす聞き上手になるための3つの習慣

暮らし

更新日:2014/5/16

 ある日、友人知人との飲み会で盛り上がって帰宅する夜道で、ふと思った。

「あんなに盛り上がったのに、気になるあの人の話を全然聞けてない!?」

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 自分をアピールしたかったのか、沈黙が怖かったのか、どっちもなのか、とにかくしゃべりまくったのに、相手の血液型すら分からないまま電車に揺られているのはなぜ?
そうか「聞く」ことができていない─会話がキャッチボールになっていないのだと愕然とした。そして会話力向上を流れ星に願う。

「聞き上手になれますように!」

 というわけで、聞き上手のプロが書いた『1万人インタビューで学んだ「聞き上手さん」の習慣』(佐藤智子/飛鳥新社)を読んでみた。

 著者の佐藤智子氏は、1万人以上の著名人や専門家らへのインタビュー実績を誇る、キャリア20年以上のカリスマ・インタビュアーである。本書には、限られた時間の中で、取材相手の心をつかみ、他では語られなかった言葉を引き出すための心構え技術─「聞き上手さんの習慣」が記されている。数ある中から、今すぐに使える「習慣」を3つ紹介しよう。

■「話す」よりも「聞く」
 自分の伝えたいことばかり話し、自分の知りたいことだけを尋ねていても、相手の話は聞き出せない。相手の関心が今どこにあり、何を求めているのか─“ニーズ”を知るための質問をすることが何より大切だと佐藤氏は言う。例としてK歯科医師の会話が紹介されている。
 患者の意志よりも、医者の意見を率直に伝えることを優先してきたせいで、K医師のクリニックは患者が激減していた。佐藤氏のアドバイスを受けK医師は、インプラント(人工歯根)を希望する年配女性の患者に「治療をしたい理由」を尋ねてみた。すると、女性患者は「娘の結婚が決まった」「母親の外見で、女手ひとつで育てた娘を結婚式で恥をかかせたくない」「歯並びはずっとコンプレックスだった」と答えた。
 たったひとつの質問で「治療の期限」「女性の経済状況」「歯並びへの思い」という3つのキーワードが得られた。それは相手の切実な「ニーズ」だ。K医師は、結婚式に間に合うスケジュールを組みつつ、経済的な負担の少ないプランを選んだ。患者は喜び、クリニックにも来院者が増えたという。

■レスポンスは迅速に、リアクションは大げさに
 何か質問して、情報を得たときは─反応をすぐ示す。いわれたことはやってみる。返事はすぐに出す。当たり前のことのようだが、これができる人は案外少ない。「聞き上手さん」は「相手が発した何気ないひと言も聞き逃さない」「どんな相手の話でも、興味を持って耳をかたむける」「どんなことにも、おもしろそう…とすぐ反応する」。つねに情報をキャッチし、相手から引き出し、自然に受け取る習慣が身についているのだ。

■話題に困ったら「相手の得意なこと」×「自分の得意なこと」
 佐藤氏が、鉄道マニアの食事会に参加したときの話。話題にまったくついていけなかった佐藤氏だったが、話がひと段落したところで自分の得意分野と鉄道ネタを掛けあわせた質問をした。
「“デートに使える沿線”なんてあったりするんでしょうか?」と。すると、マニア軍団から「それなら“五能線”だな」「車体に波しぶきがかかる箇所がありカップルなら盛り上がれるし、日本海へ沈む夕日は絶景だ」と一気に自分も会話に引き込まれ、盛り上がったという。

 というわけで、「聞き上手さん」になるためには…

ポイント1:相手のニーズを知るための質問をしよう
ポイント2:「打てば響く人」になろう
ポイント3:話題に困ったら自分の感心事と掛けて質問してみよう

 これらは、本書のほんの一部でしかないが、佐藤氏が言う「聞き上手さん」の習慣すべてに共通しているのは、話し相手に対し「私はあなたという存在を大切にしていますよ」というメッセージだ。その思いが伝われば、自然と相手は心も口も開いてくれるはず。あなたはただ、その言葉を待てばいい。

文=水陶マコト