【最近「虫」食べました?】タガメ、ミールワーム、蝉…、楽しく美味しく虫を食べるためのガイド本

食・料理

公開日:2014/5/29

 「ゴキブリは淡白でクセのない味! 昆虫食の時代がくる?」という記事を書いたのはちょうど1年前、国際連合食糧農業機関(FAO)が「人口増加に伴う食糧問題を解決する上で昆虫食が有望」という報告書を発表した後だった。しかしその後、私は虫を食べる機会がなかった。食べるチャンスがなかったわけではない。ディープな中華料理店で蝉の幼虫の炒め物がメニューにあり、食べようと思ったが、同行者の強硬な反対に遭って断念したり、イナゴの佃煮が売られているのを見たこともあったが、「エビを食べた方が美味しいよな~」と思ってしまった。そんなことを考えていたら(考えていたからかもしれないが)『びっくり! たのしい! おいしい! 昆虫食のせかい むしくいノート』(ムシモアゼルギリコ/カンゼン)という本を見つけた。著者は、偶然にも記事で取り上げた『昆虫食入門』(平凡社)を書いた内山昭一氏の「昆虫料理研究会」に参加し、現在は「虫食いライター」として活動中で、テレビなどにも出演しているという。

 中身は、とにかく「虫をどう美味しく食べるか」に特化した内容。ポップなイラストなどで、虫が苦手な人にも読みやすい配慮もある(とはいえ写真もあったりするので、ハードルは高いかもしれないが)。どんな虫が食べられて、どんな味なのか、虫を食べられる店を紹介するグルメガイドに昆虫食マンガ、虫食いQ&A、そして虫料理の写真とレシピも載っていて、一見普通の料理の上には、姿そのままの虫が乗っている。そして帯には「キモおいしい!!」の文字。本当なのだろうか、いや、今のうちに昆虫食に慣れれば、食糧危機になっても困らないハズなんだが…ということでムシモアゼルギリコさんに「今なぜ昆虫食なのか?」を聞いてみることに!

advertisement

「バッタがエビっぽい味であるように“想像がつく味”という虫もありますが、見た目からは想像もできないような華やかな香り・味わいの虫もたくさん。昆虫食を始めた当初はそんなギャップのおもしろさに夢中になりました。虫の味は素朴で繊細な味わいのものが多いので、野菜類と合わせるような、ヘルシーな調理法と相性がいいと感じています。虫そのものに体にいい栄養素が含まれていることと相まって、これからの時代のニーズに応える食として再評価されるべきだと思います」

 素朴で繊細…そんなギリコさんオススメの虫を使った料理をご紹介(本書にはこれら虫料理のレシピが掲載されている)!

▲ツムギアリのゼリーよせ

タイ料理で使われるという、樹上に巣を作るツムギアリは濃厚でクリーミーな味わい。その幼虫を使ったゼリーよせは、口の中でプチッと弾ける食感が楽しめるそうです。プチッ…。

▲タガメのエスニックスープ

日本では絶滅が危惧されているタガメ。東南アジアでは屋台などで普通に売られている。タガメのフルーティーな味わいを活かしたそうですが、水面から出ようとしているところにしか見えません…。



▲バンブーワームの豆腐ディップ

竹の内部を食べる蛾の幼虫。小麦のようなほのかな甘みのある素朴な味わいなので、味を殺さない豆腐のディップで。バンブーワームの代わりにコオロギやショウリョウバッタにしてもイケるそうです…。



▲ミールワームのオレンジブラウニー

「ナッツのような味わいで初心者向き」というコウチュウ目ゴミムシダマシ科の幼虫を、大胆にブラウニーの上に! ちなみに虫の脂質は不飽和脂肪酸なので、太りにくいそうですよ…。



▲夏の蝉オードブル

虫版親子(?)の、セミの幼虫と成虫を使った一品。成虫はサルサソース、幼虫はオリーブと一緒にどうぞ。こちらも虫食い初心者にうってつけの食材で、ビールがぐいぐい進むそうです…!

 ちなみに「夏の蝉オードブル」のレシピの1番は「捕まえてきた幼虫と成虫はざっと水洗いしてから熱湯をかけ、冷めたらペーパータオルで水けをぬぐっておく」という衝撃的な始まり方! 「スーパーに並ぶ形の整った食品以外にも、身の回りには我々が食べられるものがあふれていることを実感できるのが、昆虫食の魅力のひとつ」というギリコさん。確かに身の回りで取ってきたキノコや野草なら、全然ビックリしないですもんね…。

「都市に住んでいると、食べられるものが身の周りにあふれていることはより強く感じられると思います。自分自身は自然に触れることが少ない環境に育ったので、昆虫食は“食に対する新しい価値観”の芽生えとなりました。虫に対する生理的嫌悪感や偏見があるのもひとつの文化であると思いますが、食べることによってそれを超えてしまう楽しさというものも、ぜひ多くの方と共感したいポイントです」

 そう昆虫食の魅力を語り、「もし虫が食べたくなったら、私に連絡くださいね!」とニッコリするギリコさんでした。次回はついに「昆虫食レポート」か!?

文=成田全(ナリタタモツ)