【山崎シゲル誕生秘話】超話題作! シュール系一コママンガ『サラリーマン山崎シゲル』著者・田中光インタビュー
更新日:2014/9/29
「机の引き出しにごはんギッシリ詰め込んだの 山崎君でしょ?」
「フフッ 部長。2段目以降はおかずですよ。」
「部長。疲れが顔に出てますよ。ひと息いれて下さい。」
「缶コーヒーくれる感じで サバの水煮くれるあたりがキミらしいよ。とっても。」
一見、ごく普通のサラリーマン「山崎シゲル」と「部長」。2人が繰り広げるとんでもなく非現実的な日常の、まさに“一コマ”を描いた一コママンガ『サラリーマン山崎シゲル』(ポニーキャニオン)。お笑い芸人・田中光がTwitterにアップしていた作品がネット上で話題となり、ついに書籍化された。そして発売3週間たたずして、Amazonベストセラー総合ランキング1位に…! 人気の秘密を探るべく、著者の田中光氏に話を聞いた。
――漫画を描き始めたきっかけは?
「元々トリオやったんですが、その内のひとりがピースの又吉さんと中学のサッカー部が一緒だったので、又吉さんとは仲良くさせてもらってたんです。又吉さんに“なんか特技があったら伸ばした方がええよ”と言われまして。僕はスポーツも苦手やし、唯一、絵を描くことが好きだったので、マンガを描こうと思いました」
――なぜTwitterにアップしようと?
「これだけ面白い人がいてはる中で、どうやったら自分たちを見てもらえるだろうかと考えて。Twitterにマンガをアップしたら、“絵、面白いな”ってなって、ライブを観に来てくれる人が増えたらええなと」
――中でも、一コマ漫画にした理由とは?
「Twitterって、画像を1枚しか載せられないんですよね。それで一コママンガという形になりました。ものすごい単純な理由ですね(笑)」
――最初にアップした一コマは?
「山崎シゲルが食パンに乗って通勤するやつです。一番初めにそれをやっちゃったんで、追々、厳しくなっていったんですけど(笑)。人物設定とか、なにも考えないで始めたもので……」
――山崎シゲルってどんな人なんでしょう?
「子供心を持ってる人ですかね。たぶん頭はいいんですよ。仕事とか、ちゃんとやったらデキると思うんです。けど、なにかが大きくズレてて。天然とも違って、やっぱりズレてるんですよね。“イイ”って思ってることがズレてるんです」
――部長との関係が絶妙ですよね!
「山崎くんは部長にハチャメチャなことをして迷惑かけてるんですが、すごく部長になついていて、部長も山崎くんのこと嫌いじゃないし、山崎くんも悪意ではやってないし、バカにしたりは……若干してますが(笑)。2人の関係は、大喜利ですね。“こんな部下はイヤだ”というお題の答えをずっと考えてます」
――お題に対してパッと答える感じで描いているんですか?
「ひとつのお題で150個とか答えるのは、だいぶしんどい話なので(笑)。パッと思いつくというよりは、身の周りにある物から考えたりします。パピコを使った一コマがあるんですが、パピコの“パキッ”と折る特性って、癖のあるものじゃないですか。それ、なんか使われへんかなぁとか。あとは山崎くんにワイパー持たせたら、こいつ配ったりしそうやなとか。部長のこと好きやから、部長には多めにあげたりするんかなとか」
――特にこだわったところは?
「名前も見た目も、個性がない方がいいなと。先入観なく見てほしかったので。名前が“鬼塚”とかだったら強そうな印象ですけど、“山崎シゲル”って、なんとも思わない名前じゃないですか。山崎シゲルさんという方がいたら失礼なんですけど(笑)。“この角度から見てほしい”ではなくて、どう面白がってくれてもいいなと思ってます」
――これだけ注目されて、今の心境は?
「ついていけてないですね、全く。よく分からなくなります、こうやって取材していただいた直後にバイト行ったりしてますから(笑)」
――最後に、読者の方にメッセージを。
「先日、“この本はトイレに置いてあったらいいよね”って言われたんですが、それええなぁと思いました。トイレでちょろっと読むとか、寝る前にチラっと眺めるとか。あんまりガッツリ読まれても、くだらない内容ですから(笑)。日常にちょっと置いていただけたら嬉しいです」
京都出身ならではの、はんなりとした、ゆる~い雰囲気が魅力的な田中氏。次回作はぜひ『お笑い芸人・田中光』を描いていただきたいものだ。(それにしても「田中光」という名前は、爆笑問題の2人を合体させたみたいだな…)
▲お笑い芸人・田中光氏
文=尾崎ムギ子