電車で席を譲りたいのに、寝たフリをしてしまう人の心理

暮らし

公開日:2014/6/4

 通学、通勤の満員電車が一日の中で一番、憂鬱という人も多いのではないだろうか? 特に梅雨の季節ともなると湿った空気が車内に漂いさらに不快になってくる。そんな通学、通勤時間を快適に過ごすためにぜひオススメしたいのは心理学を取り入れること。

 『電車の中を10倍楽しむ心理学』(渋谷昌三/扶桑社)では、電車の中での人の行動を心理学で分析している。心理学を覚えることによって迷惑行為を行う人の心理がわかり、迷惑行為を減らすなどのメリットもある。本書から一部を紹介しよう。

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■つい、寝たフリをしてしまうのはなぜ?

 優先席付近で寝たフリをしている人をよく見かける。本書ではその理由について触れている。

 “傍観者効果”という言葉をご存じだろうか? 「自分と同じような立場の人がいたら、援助行動が起こりにくくなる」という効果をさす。たとえば、お年寄りや妊婦がいたとしても、自分だけでなく他の人も席を譲れる場合は自ら席を譲らなくなる。これは、席を譲る、譲らないに限らず殺人事件などでも同じ現象が起きる。

 アメリカで女性が深夜に変質者に襲われた。叫び声を聞き、窓から顔を出したのは38人。しかし、38人全員が誰も駆けつけもせず、通報もせず女性が殺されてしまうという事件があった。また、日本では2006年にJR西日本の車内で女性が強姦される事件も起きている。その際、40人の乗客がいながら誰も乗務員に通報しなかった。これも寝たフリと同じ理由といえる。

 また、“傍観者効果”に加え、「周りに人がいるのだから誰かが助けてくれるだろう」という“責任の分散化”。そして、「助けようとしても、大勢の面前で断られるのは恥ずかしい」という“聴衆抑制”が起こる。さまざまな心理効果が重なり、寝たフリやスマホをいじることで自分と車内にいる人との間に距離をとる。

■寝たフリをしないで席を譲る方法

 では、寝たフリはどうすれば解消されるのだろう。これにもコツがあった。

 席をサッと譲れる人は、お年寄りや妊婦が乗り込んできたと感じたらすぐに立ち上がることができる。だが、譲れない人は、お年寄りや妊婦が乗り込んできたという情報だけをインプットし、それ以上の情報処理をしない。そのため譲るタイミングを逃してしまう。

 一番、手軽にできる方法は「どうぞ」と言って席を譲る方法。「座って下さい」のように「こうしなさい」、「こうしてくれ」と命令すると「いらない」と反発される可能性が高くなる。
「どうぞ」のように相手にも断りやすい言葉で声を掛け、最終的に座る、座らないかの決定権を相手に譲る。そうすれば、相手も受け入れやすく、譲った方も断られても恥ずかしい思いをしなくなる。

 本書には電車の中で寝たフリだけではなく、心理学で痴漢を防ぐ方法、イヤホンの音漏れを気にしない方法などがのっている。心理学を覚えて通学、通勤の時間を快適なものにしてみてはいかがだろうか。

文=舟崎泉美